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QT延長症候群

きゅーてぃーえんちょうしょうこうぐん

Long qt syndrome; LQTS

告示

番号:14

疾病名:QT延長症候群

概要

QT時間が延長することにより、torsade de pointesと呼ばれる多形性心室頻拍、心室細動などが誘発され、突然死の危険のある心電図異常。常染色体優性遺伝形式のRomano-Ward症候群と、常染色体劣性遺伝形式のJervel-Lange-Nielsen症候群があり、それぞれ13種類、3種類の遺伝子異常が発見されている。有症状例やハイリスク例では治療の適応がある。治療困難で、予後不良の疾患。

病因

以下の遺伝子異常が報告されている。遺伝子異常が認められない例もある。

疫学

学校心臓検診では0.006%,乳幼児では0.1%に発見されている。

臨床症状

失神、突然死をおこす。 Jervel-Lange-Nielsen症候群では先天性聾を伴う。

診断

【心電図】 心電図でQT時間の延長を認める。成人ではBazettの補正(QTc=QT0.5)が一般的であるが、小児ではFridericiaの補正(QTc=QT0.3)が一般的である。以下の診断基準で診断する。 心電図

治療

β遮断薬:小児のQT延長症候群は運動やストレスが原因で失神が誘発されるものが大部分である。このような場合の第一選択薬がβ遮断薬である。ただし、LQT3などβ遮断薬が効果の薄い例もあることに注意が必要である。 β遮断薬の適応基準 クラス I  失神の既往のあるQT延長症候群、特にLQT1、LQT2 クラス IIa  症状はないが、QT延長を認め、①先天性聾、②新生児、もしくは乳児期、③兄弟姉妹の突然死の既往、④家族もしくは本人の不安、もしくは治療に対する強い希望がある場合 クラス IIb  症状がなく、①先天性聾、②兄弟姉妹の突然死の既往などを認めないもの。 Naチャネル遮断薬(メキシレチン):SCN5Aの機能亢進で発症するLQT3では有効と報告されている。 メキシレチンの適応基準 クラスIIa  1. LQT3と診断のついた失神歴のあるQT延長症候群  2.β遮断薬単独で効果のないQT延長症候群 硫酸マグネシウム:TdPの急性期治療として有効である。 ベラパミル:Caチャネル遮断薬の使用例の報告は少ない。しかしLQT8 (Timothy症候群)や、early after deporalization (EAD)が心室性不整脈に関与していることが疑われる例で、使用されることが考えられる。 カリウム:QT延長症候群の多くがIKs、IKrなどのKチャネルの異常で発症する。このため低K+血症はQT延長を悪化させる。特にLQT2で血清Kを高値に保つことが有効であったとの報告がある。 植込み型除細動器(ICD):QT延長症候群に対する非薬物治療には植込み型除細動器 (ICD) 治療、ペースメーカ治療、左側心臓交感神経節切除術がある。これらの治療法は、発作誘引となる運動制限やQT延長をもたらす薬物使用の制限など日常生活の注意点を守り、さらに薬物治療を十分行った上でも致死的発作がコントロールできない可能性が高い場合に選択される。 先天性QT延長症候群におけるICD植え込み クラスI:   心室細動または心停止の既往を有する患者(エビデンスレベルA) クラスII注1  ①Torsade de pointes (TdP)または失神の有無、②家族の突然死の有無、  ③β遮断薬に対する治療抵抗性、の3つから以下の表に示すようにIIa、IIbに分類する。 注1 クラスIIの項では、TdP・失神の既往の有無、突然死の家族歴の有無、β遮断薬の有効性の有無の3つを同等の重みとして、2つ以上の場合をIIa、1つの場合はIIbに分類した 注2 LQT3と診断された場合は、β遮断薬は投与せずに無効とする 注3 不整脈の非薬物治療のガイドライン(2006年改訂版)ではIIbに分類している ペースメーカ植え込み:徐脈が原因となるTdPによる失神を認める例が対象となったがICDの普及につれてペースメーカの代わりにICDを植え込むようになった。 左心臓交感神経節切除:本邦ではほとんど行われていない手術であるが、欧州からは薬剤抵抗性の患者に施行したよい結果が報告されている。

予後

薬剤服用、運動制限などが遵守できれば比較的よいが、突然死を完全に予防することはできない。

参考文献

Schwartz PJ, Crotti L. QTc behavior during exercise and genetic testing for the long-QT syndrome. Circulation 2011;124:2181-2184.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会