概要
病因
異所性自動能を持つ心房筋組織が心房に2カ所以上存在することにより発生する。心房炎、先天性心疾患術後の瘢痕組織から発生することもある
疫学
正確な頻度は不明である。新生児、乳児に発生するものは極めて稀である。先天性心疾患術後例では、術後年数が経つにつれ発症頻度は増加する。また術後一過性に見られるものもある
臨床症状
新生児や乳児に比較的多い不整脈で,心房の興奮にあわせ心室拍数が多く,しかも長期間持続すると頻脈誘発性心筋症を生じることがある
診断
【心電図】 2種類以上の異なった波形のP波をもつ頻拍を認める.ほとんどはnarrow QRSであるが、心室内変行伝導により,幅広いQRS波が見られることもある
治療
短い洞調律をはさんで発作が持続、ないしは繰り返すインセサント(incessant)型で心機能が低下している場合は、心室レートを下げることを目的に房室結節伝導を抑制する薬物(ジゴキシン、β遮断薬、Caチャネル遮断薬)を用いる。β遮断薬、Caチャネル遮断薬は頻拍停止に有効な場合もあり第一選択薬である。ただし心機能低下を伴う場合、いずれの薬剤も投与量、投与方法に注意を要する。第二選択薬としては、Naチャネル遮断薬(フレカイニド、 プロパフェノン、プロカインアミド、キニジン、Kチャネル遮断薬(ソタロール、アミオダロン)が用いられる。直流通電や迷走神経緊張を生じさせる手技は、特に自動能亢進の場合には一時的な抑制効果しか得られない。一般的に心房頻拍は薬物治療が困難な場合が多く、頻拍停止が得られない場合には高周波カテーテルアブレーションによる治療を考慮する。 頻拍の予防: 1)中等度以上の心機能低下を示す場合、陰性変力作用の少ないNa チャネル遮断薬が第一選択となる。したがってβ遮断作用のないNa チャネル遮断薬のうちintermediate drugであるプロカインアミド、キニジン、アプリンジンが用いられる。 2)心機能低下は軽度もしくは正常な場合、Kチャネル遮断作用のある薬剤かNaチャネル遮断薬(intermediate〜slow drugs)を用いる。 3)高周波カテーテルアブレーション 薬剤無効例では高周波カテーテルアブレーションが行なわれる
予後
頻拍のコントロールがつけば良好である。頻拍が持続すれば、頻拍依存性心筋症を発症することがあり、予後不良となる
参考文献
1. 長嶋正實他.小児不整脈改訂2版. 診断と治療社2011
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会