概要
病因
疫学
学校心臓検診では0.002%に発見される
臨床症状
胎児水腫や、新生児、乳児期で徐脈が持続する場合には、心不全症状(哺乳不良、多呼吸、顔色不良、網状チアノーゼ、肝腫大など)がみられる。 幼児期以降では、めまい、失神、痙攣などの脳虚血症状を認める例が多い。 年長児では、運動対応能低下、失神などを契機に発見されることがある。また、突然死も起こりうるため、ペースメーカ治療を念頭においておく必要がある。 特に進行性心臓伝導障害ではペースメーカ植込みは必須である
診断
【心電図】 P波が心室に伝導せず、P波とQRS波が全く独立して認められる。通常P波のレートは、QRSのレートより速い。心室からの補充調律で心室が収縮するが、補充調律のQRS幅が狭いほどHis束や房室結節近傍からの調律で、QRS幅が広いほど心室固有筋からの調律と考えられている。一般に補充調律のQRS幅が狭いほど予後がよく、QRS幅が広いほど早期にペースメーカ植込みが必要となることが多い
治療
1)薬物治療 a. アトロピン 迷走神経緊張が関与した例で効果が期待できる.緊急時には0.02〜0.04 mg/kg を静注する. b. イソプロテレノールおよび交感神経作動薬 イソプロテレノール0.01〜0.03μg/kg/分の持続点滴は,緊急時やペースメーカ植込みまでの橋渡しとして投与される.経口薬としては,イソプロテレノール1mg/kg/日(分3〜4)やオルシプレナリン1mg/kg/日(分3〜4)を投与する。 2) ペースメーカ治療 ペースメーカの適応 クラスI 1. 高度房室ブロックまたは完全房室ブロックで、症候性徐脈、心室機能低下、低拍出量のいずれかを認める(C) 2. 心臓手術後の高度房室ブロックまたは完全房室ブロックで回復の見込みがないか、7日以上持続する(B) 3. 先天性完全房室ブロックで、wide QRSの補充調律、多源性心室期外収縮、心室機能低下のいずれかを認める(B) 4. 先天性完全房室ブロックで、乳児期に心拍数が55bpm未満(C) (先天性心疾患患者では<70bpm) クラスIIa 1. 1歳以上の先天性完全房室ブロックで、平均心拍数が50bpm以下、突然基本心室周期が2〜3倍以上に延長、心拍数増加不良に伴う症状、のいずれかを認める(B) 2. 先天性心疾患で、洞徐脈や房室ブロックによる循環不全(C) 3. 先天性心疾患術後に一過性完全房室ブロックをきたした後脚ブロックが残存し、失神を認める(B) クラスIIb 1. 先天性心疾患術後に一過性完全房室ブロックをきたした後、二枝ブロックが残存する(C) 2. 無症候性の先天性完全房室ブロックで、narrow QRSによる年齢相応の心拍数があり、心機能が保たれている(B)
予後
ペースメーカ植込みを行なえば予後は比較的良好である。無治療で突然死することがある
参考文献
1. 長嶋正實他.小児不整脈改訂2版. 診断と治療社2011 2. 住友直方、岩本眞理、牛ノ濱大也、吉永正夫、泉田直己、立野 滋、堀米仁志、中村好秀、安田東始哲、高橋一浩、安河内聰:小児不整脈の診断・治療ガイドライン、日本小児循環器誌、26(Supplement):1-62, 2010
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会