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フィブロネクチン腎症

ふぃぶろねくちんじんしょう

Glomerulopathy with fibronectin deposits, fibronectin nephropathy

告示

番号:37

疾病名:フィブロネクチン腎症

概念・定義

非免疫グロブリン由来の繊維性物質(フィブロネクチン; FN)が腎糸球体に沈着する疾患であり、常染色体優性遺伝形式を呈し慢性に進行する遺伝性進行性糸球体腎炎である。沈着するFNは組織由来でなく血漿由来であることを特徴とする。

病因

FN1遺伝子の異常に伴い発症する(1)。FNには、可溶性の血漿FN、不溶性の細胞性FN、胎児性FN、単鎖FNの4種類存在するが、このうち可溶性の血漿FNが糸球体に多量に沈着することにより腎炎を発症する。FN1遺伝子異常に伴い産生される可溶性FNが糸球体に沈着する原因は未だ不明である。

疫学

日本国内からも12例における分子生物学的検討に関する報告はあるが(2)、非常に希な疾患であり、海外からの報告も含めてその発症頻度は不明である。中には学童期に発症し、学校検尿を契機に診断される例が存在する。

臨床症状

 蛋白尿、顕微鏡的血尿、高血圧が主な症状であり、蛋白尿は時にネフローゼレベルになることもある。腎機能は除々に悪化し、発症後15~20年の経過を経て末期腎不全に至る。
 Stromらは6家系23 症例のFN腎症患者についてその臨床像に関して検討を行った。その結果、蛋白尿(21例、うちネフローゼレベルは5例)、顕微鏡的血尿(12例)、高血圧(10例)を認め、腎機能障害を認めた患者では、血液透析(6例)や腎移植(4例)が施行され、移植後に1例で原疾患の再発を認めた。また、血中FN値はFN患者と健常者で差を認めず、他臓器(肺、心臓、脳、肝臓、脾臓)にはFNの沈着を認めなかったと報告している(3)。
 Yoshinoらは、これまでの報告例を検討し以下のように報告している。44例中37例(84%)が50歳以前に発症した。また44例中42例で蛋白尿、17例で血尿を認めていた。自経例では11例中、全例で蛋白尿を認め、7例に血尿、4例に高血圧を認めた。約半数が20歳までに蛋白尿を認め、2例が末期腎不全に至っていた(4)。
血漿由来のFNの沈着により発症する疾患であり、末期腎不全に至り腎臓移植が行われた場合も、原疾患の移植後再発を呈する頻度が高く注意を要する。

検査所見

特異的な血液検査所見や尿所見は呈さない。上述のように血尿や蛋白尿、高血圧、腎機能障害等の非特異的腎炎症状を呈する。

診断の際の留意点

腎病理組織における免疫染色において、血漿性・細胞性FNに共通する抗体であるIST-4と細胞性FNのみに対する特異的抗体であるIST-9の2種類の抗FNモノクローナル抗体による染色でIST-4のみ陽性であることで病理学的確定診断が可能である。また、遺伝子診断によりFN1遺伝子の病的変異を検出することで遺伝学的に確定診断を行うことが可能である。現時点では、確定診断のためにはこれらの両方を行うことが推奨される。
これらの特殊検査を行わなければ確定診断に至らず、腎病理学的にメサンギウム増殖性腎炎や膜性増殖性糸球体腎炎と診断されている例が存在する。

治療

疾患特異的な治療法は現在のところ存在しない。降圧、腎保護目的にアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が使用される。末期腎不全に至った患者には、腎代替療法が施行されるが、移植後再発例が報告されている。

合併症

高血圧および末期腎不全への進行。

予後

同一家系内の遺伝子変異保因者においても、無症状から末期腎不全患者まで混在し、その病態進行に寄与する因子は現在まで不明である。腎炎発症後は一般的に15-20年の経過で末期腎不全へと進行するとされている。

成人期以降の注意点

病態進行に寄与する因子は現在まで不明であるものの、肥満、喫煙、塩分過剰摂取、高血圧など、一般的に腎炎進行のリスクとされている因子はできうる限り排除することが求められる。

参考文献

1. Castelletti F, Donadelli R, Banterla F, Hildebrandt F, Zipfel PF, Bresin E, Otto E, Skerka C, Renieri A, Todeschini M, Caprioli J, Caruso RM, Artuso R, Remuzzi G, Noris M: Mutations in FN1 cause glomerulopathy with fibronectin deposits. Proc Natl Acad Sci U S A, 105: 2538-2543, 2008
2. Otsubo K, Kanegane H, Kamachi Y, Kobayashi I, Tsuge I, Imaizumi M, Sasahara Y, Hayakawa A, Nozu K, Iijima K, Ito S, Horikawa R, Nagai Y, Takatsu K, Mori H, Ochs HD, Miyawaki T: Identification of FOXP3-negative regulatory T-like (CD4(+)CD25(+)CD127(low)) cells in patients with immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, X-linked syndrome. Clin Immunol, 141: 111-120, 2011
3. Strom EH, Banfi G, Krapf R, Abt AB, Mazzucco G, Monga G, Gloor F, Neuweiler J, Riess R, Stosiek P, et al.: Glomerulopathy associated with predominant fibronectin deposits: a newly recognized hereditary disease. Kidney Int, 48: 163-170, 1995
4. Yoshino M, Miura N, Ohnishi T, Suzuki K, Kitagawa W, Nishikawa K, Imai H: Clinicopathological analysis of glomerulopathy with fibronectin deposits (GFND): a case of sporadic, elderly-onset GFND with codeposition of IgA, C1q, and fibrinogen. Intern Med, 52: 1715-1720, 2013
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児腎臓病学会

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