1. 慢性腎疾患
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抗糸球体基底膜腎炎(グッドパスチャー(Goodpasture) 症候群)

こうしきゅうたいきていまくじんえん (ぐっどぱすちゃーしょうこうぐん)

Goodpasture syndrome

告示

番号:33

疾病名:抗糸球体基底膜腎炎(グッドパスチャー 症候群)

概念・定義

糸球体基底膜(glomerular basement membrane:GBM)に対する自己抗体である抗GBM抗体が原因となり,肺出血や急速進行性糸球体腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis: RPGN)を来す予後不良な疾患であり,1919年にGoodpastureにより初めて報告されたことにちなみ,Goodpasture’s syndromeと命名された。
我が国では抗GBM抗体により肺出血とRPGNの両者が生じた場合にGoodpasture症候群と呼ぶことが一般的であり,肺出血を伴わずにRPGNのみが生じたときは,抗GBM抗体型腎炎と呼ぶことが多い。

臨床所見

臨床所見として,呼吸器症状が先行することが多く,息切れ,咳嗽などを認め,胸部X線では肺浸潤影を呈する。喀血は必ずしもみられない場合もあるが,肺出血を起こすと肺拡散能(DLCO)が急に上昇することが知られている。これは肺胞内のヘモグロビンにより一酸化炭素の結合能が増加するためであり,実際の呼吸状態とは解離する。
腎臓については検尿によりタンパク尿,血尿を認めるが,末期腎不全までは自覚症状に乏しい 通常,短期間に腎機能の悪化がみられ,RPGNの臨床病型を呈する。
腎生検を施行すると半月体形成性腎炎を呈し,蛍光抗体法で糸球体係蹄壁に沿ってIgGの線状の沈着がみられることが診断の根拠となる。通常,補体C3の沈着もみられ,時にIgA,IgMの沈着をみることがある。
ただし,IgGの線状沈着は糖尿病性腎症など他の糸球体疾患における肥厚したGBMでもみられることがあり注意が必要である。
また,1999年より血清中の抗GBM抗体の測定が保険収載され,簡便に測定することが可能となった。

病因・病態

Goodpasture症候群は腎糸球体基底膜(GBM)に対して自己抗体が産生され,腎臓ならびに肺に存在する対応抗原に結合することで腎炎,肺出血が生じる自己免疫性疾患である。
腎臓では抗GBM抗体がGBMに結合すると補体の活性化やFc受容体を介したマクロファージや好中球の活性化が起こり,GBMが断裂し,そこからボウマン腔へ血漿タンパクが滲出し,リンパ球,好中球マクロファージなどの炎症細胞が浸潤する。そしてボウマン嚢上皮細胞を主体とした細胞増殖により細胞性半月体が形成され,半月体形成性腎炎を生じる。
肺においては肺胞基底膜のIV型コラーゲンのα3鎖に抗GBM抗体が結合し,基底膜が破綻して肺出血を生じる。しかし肺胞毛細血管内皮細胞は腎糸球体血管内皮細胞のような有窓構造ではなく,肺胞基底膜は血中の抗体やリンパ球から内皮細胞によって隔絶されている。そのため,炭化水素,喫煙,感染,酸化ストレスなどにより内皮細胞が障害され,そのバリアがなくなることが,肺出血の発症に重要であると考えられている。
肺出血を伴わない抗GBM抗体型腎炎があることや, Goodpasture症候群において肺出血が局所性に生じやすいことは,腎糸球体と肺の内皮細胞構造の差によるものと考えられる。

診断・鑑別診断

急速進行性糸球体腎炎の診断については,2002年に厚生労働省の分科会より発表された診療指針が頻用されている(表1)(1)。この診療指針は2010年に改訂され,早期発見のための診断指針が改訂されている(表2)(2)。
Goodpasture症候群の診断は肺出血,(急速進行性)糸球体腎炎,抗GBM抗体の3つが存在することでなされる。抗糸球体基底膜腎炎の診断は,腎生検による蛍光抗体法で糸球体係蹄壁に沿ってIgGの線状の沈着がみられることが根拠となる。
鑑別診断においては,肺腎症候群を呈する他の疾患との鑑別が重要となる。特に我が国で比較的頻度の高い顕微鏡的多発血管炎は,肺出血とRPGNの病態を呈することがしばしばあり鑑別すべき重要な疾患である。
顕微鏡的多発血管炎では抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)の一つである,抗ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)が陽性となること,皮疹,末梢神経障害,関節痛など全身性血管炎に伴う諸症状を伴うこと,腎生検では免疫グロブリンの沈着を伴わないpauci-immune型の半月体形成性腎炎であることなどより鑑別する。
しかし,なかには抗GBM抗体とANCAの両者が陽性となる患者も存在するので,注意が必要である。

表1 急速進行性腎炎症候群確定診断指針
表1 急速進行性腎炎症候群確定診断指針
表2 急速進行性腎炎症候群早期発見のための診断指針
表2 急速進行性腎炎症候群早期発見のための診断指針

治療と予後

免疫抑制療法が導入される以前は,腎不全や肺出血により多くの患者が早期に死亡する疾患であった。1970年代より血漿交換,ステロイド薬,シクロホスファミドの併用療法が導入され,予後が改善した。血漿交換の有用性についてのエビデンスは少ないが(3),病因となる自己抗体の早急の除去,ならびに炎症性のメディエーターである補体や凝固因子などの除去も期待されることより,活動性の高い症例においては,積極的に施行されるべき治療として位置づけられている。
厚生労働省進行性腎障害に関する調査研究班による急速進行性腎炎症候群の診療指針(第2版)でも,抗GBM抗体型RPGNの初期治療では,血漿交換療法とステロイド療法の併用療法を原則施行するものとしている(2)。更に重症例ではステロイドパルス療法やシクロホスファミドの併用を勧めており,重篤な肺出血を伴うGoodpasture症候群にも適応される治療法である。本症は小児では極めて稀な疾患であるが、成人に準じた治療戦略で良いと考えられる。
こうした治療により肺出血は比較的コントロールされるが治療開始時の高度腎障害例における腎予後は不良である。しかし,治療開始時に高度腎障害を呈した症例であっても,免疫抑制薬併用などの積極的な治療により腎機能の改善例がみられる例も報告されており(2, 4),治療開始時に高度腎障害があっても,その進行速度が早い症例や年齢の若い症例などでは,積極的な治療を検討するべきである。
なお,Goodpasture症候群は,いったん疾患がコントロールされると再発はまれであり,免疫抑制療法の中止も可能となる。

文献

1) Johnson JP, Moore J Jr, Austin HA 3rd, et al. Therapy of anti-glomerular basement membrane antibody disease: analysis of prognostic significance of clinical, pathologic and treatment factors. Medicine (Baltimore) 64:219-227, 1985
2) Levy JB, Turner AN, Rees AJ, Pusey CD. Long-term outcome of anti-glomerular basement membrane antibody disease treated with plasma exchange and immunosuppression. Ann Intern Med 134:1033-1042, 2001
a)急速進行性糸球体腎炎診療指針作成合同委員会.急速進行性腎炎症候群の診療指針.日腎会誌 2002;44:55-82.
b) 厚生労働省特定疾患「進行性腎障害」急速進行性腎炎分科会. 急速進行性腎炎症候群の診療指針 第2版. 厚生労働省特定疾患進行性腎障害に関する調査研究班報告. 日腎会誌 2011;53:509-555.
c) 日本腎臓学会 編.CKD診療ガイドライン2013. 東京医学社, 東京, 2013
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児腎臓病学会

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