概念・定義
乳幼児期の肺や稀には壁側胸膜に発生する胎児性悪性腫瘍。
疫学
1ヶ月から12歳(平均3-4歳)の小児に発生し、男女比は1:1。
また、小児がん学会全数把握事業の集計結果によると、2009年では全小児がん2095例中2例、2010年では2065例中4例、2011年では1802例中2例と極めて稀である。
病因
胸膜肺芽腫家系の遺伝子解析により、染色体14qにコードされるDICER-1欠失が原因の一つとして考えられている。
症状
呼吸困難、発熱、咳嗽、胸痛、胸部違和感、食欲不振など。胸部単純写での異常陰影により、偶然見つかることもある。
診断
外科的切除された検体の病理学的検索による。
組織学的にはType I(嚢胞性)、type II(嚢胞性+充実性)、type III(充実性)にわけられる。
Type Iでは、嚢胞状の気道上皮下に高密度に紡錘形の異型細胞が認められ横紋筋や軟骨への分化を伴うこともある。その一方で、壊死や線維化、石灰化などの退縮像を認めることもある。Type IIでは、部分的にtype I相当の組織像を呈するとともに、異型細胞の充実性増殖が明瞭となる。Type IIIでは、充実性病変が大部分を占める。
治療
外科的完全切除が最も推奨される治療法である。しかし、不完全切除例や転移が認められる場合には放射線や化学療法などの追加治療が必要になる。
化学療法に関して決まったプロトコールは存在しないが、vincristine + actinomycin D + ifosfamide + doxorubicinやIVADo療法 (ifosfamide + doxorubicin + vincristine + actinomycin D)の有効性が報告されている。
予後
病理組織学的typeにより、予後に差があるとされている。5年生存率はtype Iで約85%、type IIで約60%、type IIIで約40%である。
参考文献
田中祐吉, 田中水緒, 五味淳. 胸膜肺芽腫. 病理と臨床. 28(3): 282-287, 2010
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会