1. 悪性新生物
  2. 大分類: リンパ腫
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Tリンパ芽球性リンパ腫

てぃーりんぱがきゅうせいりんぱしゅ

Precursor T lymphoblastic lymphoma

告示

番号:87

疾病名:Tリンパ芽球性リンパ腫

疾患概念

悪性リンパ腫は、リンパ系細胞由来の悪性腫瘍で骨髄を除くリンパ組織・非リンパ組織に原発するものと定義され、ホジキンリンパ腫と非ホジンキンリンパ腫(NHL)に大別される。リンパ芽球性リンパ腫(LBL)はNHLに属し、Tリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)はterminal deoxynucleotidyl transferase(TdT)陽性でT細胞型の表現型を有する。骨髄に浸潤がある場合、LBLと急性リンパ性白血病(ALL)の明確な区別は難しいが、従来、骨髄芽球が25%以上である場合をALLとし、25%未満をLBLとしている。WHO分類はLBLとALLを同じ病型に分類している。LBLはALLとは対照的に、分子生物学的特徴はほとんど明らかになっていないが、小児T-LBLにおいては、6番染色体長腕のヘテロ接合性の喪失(6q LOH)が予後不良と関連し、NOTCH1遺伝子変異が予後良好と関連することが報告されている。

疫学

本邦における小児悪性リンパ腫の年間発症数は100-150例程度で、T-LBLはそのうちの20%程度を占める。小児については各年齢において発生数に明確な差は見られない。

病因

病因は不明な場合が多く小児のデータは少ないが、NHL全体の危険因子としては、EBウイルス、(DNA修復障害に伴う免疫不全症などの)先天性免疫不全者および後天性の免疫不全状態などが挙げられる。

臨床症状

T-LBLでは、多くの患者で前縦隔腫瘍が認められ、気管の圧迫により呼吸困難、喘鳴、または顔面・頸部・上肢の腫脹などの症状を呈することがある。胸水や心嚢液貯留なども見られる。頸部では無痛性リンパ節腫脹を呈する。

診断

治療

多剤併用化学療法が有効であり、ALLと同様の治療骨格が基本である。放射線治療は気道閉塞や上大静脈症候群などで緊急避難的に使用する以外は適応になることは少ない。本邦では小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)により限局例にはLLB-NHL03、進行症例にはALB-NHL03、ALB-NHL14の治療研究がなされ、いずれも治療期間は約2年間であった。造血幹細胞移植は再発例を除いて適応となるケースは少ない。

予後

化学療法の進歩により、限局性の病期の症例では病型にかかわらず90%以上の治癒率が期待できる。一方、進行病期の症例においてはリンパ芽球性リンパ腫で70~80%の治癒率が期待される。しかしながら、難治の症例もときにみられ、これらの症例の抽出、治療の改善が期待される。

成人期以降の注意点

①再発 ②二次がん ③心機能障害 ④骨粗鬆症・骨壊死 ⑤眼科的異常 ⑥低身長・肥満・耐糖能異常・高血圧 ⑦性腺機能障害 ⑧白質脳症 などが生じ得る。全脳・全脊髄放射線照射によって他に、⑨二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑩内分泌機能障害 などが生じ得る。 ※造血幹細胞移植後の成人期以降の注意点 ①内分泌機能障害 ②成長障害 ③メタボリック症候群 ④不妊症 ⑤心機能障害 ⑥呼吸機能障害 ⑦消化管障害 ⑧肝障害 ⑨腎障害 ⑩眼科的異常 ⑪歯牙異常 ⑫聴力障害 ⑬骨粗鬆症・骨壊死 ⑭慢性移植片対宿主病 ⑮免疫不全 ⑯二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑰二次がん などが生じ得る。

参考文献

  1. 小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2016年版、5章 リンパ腫 日本小児血液・がん学会編集、金原出版、2016
  2. Kobayashi R, et al. Treatment of pediatric lymphoma in Japan: Current status and plans for the future. Pediatr Int 57:523-534, 2015
  3. 三井哲夫:小児リンパ腫診療の進歩,臨床血液58 (10):2168-2177, 2017.
  4. National Cancer Institute. Childhood Non-Hodgkin Lymphoma Treatment (PDQ ®)―Health Professional Version. General Information About Childhood Non-Hodgkin Lymphoma (NHL)(https://www.cancer.gov/types/lymphoma/hp/child-nhl-treatment-pdq). Accessed Jan 31 2021.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会