疾患概念
悪性リンパ腫は、リンパ系細胞由来の悪性腫瘍で骨髄を除くリンパ組織・非リンパ組織に原発するものと定義され、ホジキンリンパ腫と非ホジンキンリンパ腫(NHL)に大別される。未分化大細胞リンパ腫(ALCL)は、NHLに属し、免疫表現型は主として成熟T細胞型であるが、ヌル細胞型も見られる。全ての症例でCD30が陽性となる。90%以上の症例でALK遺伝子再構成陽性となる。WHO分類改定第4版では、ALK陽性と陰性でALCLの病型を区別して分類している。
疫学
本邦における小児悪性リンパ腫の年間発症数は100-150例程度で、ALCLはそのうちの15%程度を占める。
病因
病因は不明な場合が多く小児のデータは少ないが、NHL全体の危険因子としては、EBウイルス、(DNA修復障害に伴う免疫不全症などの)先天性免疫不全者および後天性の免疫不全状態などが挙げられる。
臨床症状
リンパ節病変に加え、皮膚及び骨に病変を認める。頻度は低いが、消化管、肺、胸膜、筋肉などの節外病変を呈する。中枢神経や骨髄への浸潤はまれである。長期にわたって、発熱や体重減少などのB症状がみられ、漸増・漸減をくりかえすため見逃されることがある。
診断
治療
多剤併用化学療法が有効である。本邦では、ALCL99国際共同研究が行われ、未分化大細胞リンパ腫では成熟B細胞性リンパ腫と同様にブロック型治療が行われている。標準的には治療期間は約6ヵ月である。新薬としては、CD30陽性細胞を標的としたブレンツキシマブ・ベドチンやALK阻害剤であるアレクチニブが再発または難治の患者に対し使用可能となっている。また、同様の患者に対しNPM-ALK融合蛋白阻害剤であるクリゾチニブの医師主導治験がすすめられている。日本小児がん研究グループ(JCCG)の血液腫瘍分科会(JPLSG)では、小児の再発・難治性ALCLに対する骨髄非破壊的前処置を用いた同種造血細胞移植の有効性について多施設共同臨床研究が進行中である。
予後
化学療法の進歩により、未分化大細胞リンパ腫でも70~80%の治癒率が期待される。難治の症例に対しても、新規薬剤や新規治療法による予後の改善が期待される。
成人期以降の注意点
①再発 ②二次がん ③心機能障害 ④骨粗鬆症・骨壊死 ⑤眼科的異常 ⑥低身長・肥満・耐糖能異常・高血圧 ⑦性腺機能障害 ⑧白質脳症 などが生じ得る。全脳・全脊髄放射線照射によって他に、⑨二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑩内分泌機能障害 などが生じ得る。
※造血幹細胞移植後の成人期以降の注意点
①内分泌機能障害 ②成長障害 ③メタボリック症候群 ④不妊症 ⑤心機能障害 ⑥呼吸機能障害 ⑦消化管障害 ⑧肝障害 ⑨腎障害 ⑩眼科的異常 ⑪歯牙異常 ⑫聴力障害 ⑬骨粗鬆症・骨壊死 ⑭慢性移植片対宿主病 ⑮免疫不全 ⑯二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑰二次がん などが生じ得る。
参考文献
- 小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2016年版、5章 リンパ腫 日本小児血液・がん学会編集、金原出版、2016
- Kobayashi R, et al. Treatment of pediatric lymphoma in Japan: Current status and plans for the future. Pediatr Int 57:523-534, 2015
- 三井哲夫:小児リンパ腫診療の進歩,臨床血液58 (10):2168-2177, 2017.
- National Cancer Institute. Childhood Non-Hodgkin Lymphoma Treatment (PDQ ®)―Health Professional Version. General Information About Childhood Non-Hodgkin Lymphoma (NHL)(https://www.cancer.gov/types/lymphoma/hp/child-nhl-treatment-pdq). Accessed Jan 31 2021.
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会