1. 悪性新生物
  2. 大分類: リンパ腫
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成熟B細胞リンパ腫

せいじゅくびーさいぼうりんぱしゅ

Mature B-cell lymphoma

告示

番号:86

疾病名:成熟B細胞リンパ腫

疾患概念

成熟B細胞性リンパ腫(B-NHL)は非ホジキンリンパ腫 (NHL)に属し、NHLはホジキンリンパ腫 (HL)として分類されないすべてのリンパ腫を含む多様な疾患群であり、リンパ腫の85%を占める。臨床的には、小児NHLはHLに比しより全身的であり、限局病変と考えられる場合でも全身的にNHL細胞が認められることが多く、このことから小児NHLは小児HLとも成人NHLとも異なった性質を有している。小児NHLは、B-NHLのほか、リンパ芽球性リンパ腫,未分化大細胞性リンパ腫,その他稀なリンパ腫からなり、B-NHLはバーキットリンパ腫 (BL)とびまん性大細胞性リンパ腫 (DLBCL)に大別される。なお原発性縦隔大細胞リンパ腫 (PMBCL)は、組織型よりB-NHLに分類されるが、稀であることから他項(18から22までに揚げるもののほか、リンパ腫)で述べる。小児B-NHLは高増殖率であるという性質を有することから異常な腫瘍細胞の増殖が病態と考えられており、成人B-NHLの病態と考えられているアポトーシス不全とは異なっている。

疫学

本邦における年間の小児NHL発症数は100-150例であり、NHLにおいてB-NHLは45%を占める。我が国ではB-NHLにおけるBLとDLBCLの発症比率は4:3で、ややBLの方が多いが、欧米では更にBLの割合が高くNHLの4割を占めるとされる。

病因

病因は不明であり、出生前後の疫学研究を含め現時点で日々接しているもので悪性リンパ腫の発症リスクを増加させることに関連付けられているものはないが、時に免疫不全やEBウイルスは関与する場合がある。小児B-NHLの1つの特徴は、胚中心細胞由来である場合が成人に比し多いということであるが、これは小児においては免疫系が発展途上であるということと年齢による抗原反応の結果と考えられている。

臨床症状

成人で通常みられる無痛性腫瘤とは異なり、小児では侵襲的播種病変で腫瘤性病変が急速に増大することがある。このため小児がんを専門とする施設へ迅速に紹介することが肝要で、最初の病状評価ならびにstagingが正確になされることにより適切な治療を享受できる。生検などの診断前に緊急対応が必要な場合があり、腫瘤による上あるいは下大静脈閉塞、気道閉塞、脊髄圧迫、心タンポナーデ、腸重積よる腸閉塞、中枢神経合併症などが挙げられる。腫瘍細胞は通常高細胞分裂指数を有するため速く増大し速く壊れ、結果として高尿酸血症ならびに腫瘍崩壊症候群 (TLS)を引き起こす。

診断

治療

BL, DLBCLいずれに対しても同一の治療プロトコールが用いられ、短期ブロックタイプの化学療法が用いられる。腫瘍細胞の再増大を防ぐために骨髄回復直後に次の化学療法のブロックを繰り返し行っていくことが肝要である。このため入院期間は、限局期例で2-4か月,進行期例でも半年程度である。なお放射線治療の追加(初発時の縦隔腫瘤ならびに髄外腫瘤に対する緊急照射は有効)ならびに手術による原発腫瘍の腫瘍量の減少はいずれも生存率の改善にはつながらない。
B-NHLの治療成績がこの40年で劇的に改善した要因は2つある。1つ目として、進行期例に対してエンドキサンを中心とした抗がん剤の強化を行い、中枢神経病変に対する治療強度増強としてのメソトレキセート大量,キロサイド大量療法が組み込まれたことが挙げられる。これは特にBLで重要な役割を果たしている。2つ目は支持療法の進歩であり、これにより治療初期のTLSによる早期死亡が減少し、治療間隔の短縮が可能となった。支持療法は少し前までは、積極的な補液、アロプリノール投与と尿のアルカリ化が行われていたが、アロプリノールに替わりラスブリカーゼが使用されるようになり、尿のアルカリ化は不要となった。最近では進行期例に対しリツキシマブを加え更なる治療成績の向上が認められるようになったが、これによる限局例に対する有効性は検証されていない。

予後

B-NHLの無病生存率は限局期例で95%前後、進行期例でも80-90%前後と良好である。治療関連死は、治療強度が極めて強いにもかかわらず1,2%程度であり、晩期合併症に関しても今までの治療で健常同胞と差が無いことから、現在のB-NHL化学療法は成熟の域に達しているといえる。しかし、再発、治療抵抗例の場合は、造血細胞移植を含む強力な治療にもかかわらず予後はいまだもって不良である。BLに比しDLBCLの方がやや良いとはされるもののいずれも惨憺たるもので、この群に対しては、細胞免疫療法などの新規治療法の開発が待たれる。

成人期以降の注意点

①再発 ②二次がん ③心機能障害 ④骨粗鬆症・骨壊死 ⑤眼科的異常 ⑥低身長・肥満・耐糖能異常・高血圧 ⑦性腺機能障害 ⑧白質脳症 などが生じ得る。全脳・全脊髄放射線照射によって他に、⑨二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑩内分泌機能障害 などが生じ得る。

※造血幹細胞移植後の成人期以降の注意点
①内分泌機能障害 ②成長障害 ③メタボリック症候群 ④不妊症 ⑤心機能障害 ⑥呼吸機能障害 ⑦消化管障害 ⑧肝障害 ⑨腎障害 ⑩眼科的異常 ⑪歯牙異常 ⑫聴力障害 ⑬骨粗鬆症・骨壊死 ⑭慢性移植片対宿主病 ⑮免疫不全 ⑯二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑰二次がん などが生じ得る。

参考文献

  1. Gross TG, Kamdar KY, Bollard CM: Malignant Non-Hodgkin Lymphoma in Children. Blaney SM, Adamson PC, Helman LJ. Pizzo and Poplack’s Pediatric Oncology, 8th Edition, Wolters Kluwer, 2020: 538-553.
  2. 三井哲夫:小児リンパ腫診療の進歩,臨床血液58 (10):2168-2177, 2017.
  3. Fujita N, Kobayashi R, Atsuta Y, et al.: Hematopoietic stem cell transplantation in children and adolescents with relapsed or refractory B-cell non-Hodgkin lymphoma. Int J Hematol 109(4):483-490, 2019.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会