疾患概念
急性白血病は造血器の悪性腫瘍であり、小児では一般に急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病に大別される(小児では慢性リンパ性白血病は極めて稀である)。しかし、このいずれにもあてはまらない表現型をとることもあり、分化系統不明瞭な急性白血病(Acute leukemia of ambiguous lineage)とされ、WHO分類ではひとつの疾患分類として独立している1)。特定の分化系統を示さずに、どの分類も満たさないものを急性未分化型白血病(Acute undifferentiated leukemia)もしくは急性分類不能型白血病(Acute unclassified leukemia)と分類し、いずれもAULと略される。複数の分化系統を示すものを混合型急性白血病(Mixed phenotype acute leukemia, MPAL)と分類する。NK(ナチュラルキラー)細胞の表現型を持つものはNK細胞白血病として分類され、かつては芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm, BPDCN)と混同されていたことから分化系統不明瞭な急性白血病に含まれていたが、WHO分類2017年度版からはリンパ系腫瘍に含まれている。
基本的な病態は他の白血病と共通であり、白血病の診断は骨髄穿刺での芽球の検出によってなされ、表面抗原の発現パターンにより分類がなされる。芽球の増殖により正常な造血が損なわれるほか、芽球の浸潤によるリンパ節や肝臓・脾臓などの腫大がみられることがある。
疫学
AUL、MPAL、NK細胞型白血病などの稀な白血病は頻度が明確に集計されている報告は少なく、本邦での集計ではこの分類に相当する「Rare leukemia」は造血器腫瘍の1%以下であり、年間に5-10人程度と推測される2)。
臨床症状
腫瘍細胞の表現型が異なっても他の白血病と症状は共通している。白血病においては特異的な症状はなく、不特定の症状が長引くことが疾患を疑う契機になる。比較的多い症状は芽球の増殖・浸潤によって起こる疼痛(骨痛)、リンパ節腫大、肝腫大、脾腫大、頭痛、精巣腫大や造血の抑制の由来する発熱、倦怠感、易出血性(鼻出血、皮下出血)などである。これらの症状が長引いた際に採血が行われ、診断が疑われる契機になることが多い。非特異的な症状や所見であっても、長引くもしくは反復する場合には本疾患等を鑑別に考え採血を施行することが必要である。
採血では、白血球数は増加・減少のいずれも起こりうる。また、白血球数が正常であっても分画の異常(芽球の出現や好中球の減少)がみられることがあり、目視による分画測定が重要である。他に貧血、血小板減少、高LDH血症などがしばしばみられるが、一般的な血液検査では異常が見られない例もみられるため、血液検査が正常であるというだけでは本疾患を否定することはできない。疾患の診断には骨髄検査が必須である。
治療
稀な表現型の白血病に対する標準的治療はなく、急性リンパ性白血病もしくは急性骨髄性白血病に用いられる化学療法骨格が行われることが多い。それぞれの治療に対する反応性を評価し、治療効果に乏しい場合には他方への変更を考慮するのが一般的である3)。AULやMPALで検出される染色体・遺伝子異常としてはt(9;22)やMLL遺伝子の転座が多く報告されているが、この群におけるそれぞれの予後因子としての意義はまだ確立していない。NK細胞性白血病については、L-asparaginaseの有効性を示唆する報告がなされている4)。
予後
頻度が少なく多数例での集計がなされていないため、その予後は明らかになっていない。
成人期以降の注意点
①再発 ②二次がん ③心機能障害 ④骨粗鬆症・骨壊死 ⑤眼科的異常 ⑥低身長・肥満・耐糖能異常・高血圧 ⑦性腺機能障害 ⑧白質脳症 などが生じ得る。全脳・全脊髄放射線照射によって他に、⑨二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑩内分泌機能障害 などが生じ得る。
※造血幹細胞移植後の成人期以降の注意点
①内分泌機能障害 ②成長障害 ③メタボリック症候群 ④不妊症 ⑤心機能障害 ⑥呼吸機能障害 ⑦消化管障害 ⑧肝障害 ⑨腎障害 ⑩眼科的異常 ⑪歯牙異常 ⑫聴力障害 ⑬骨粗鬆症・骨壊死 ⑭慢性移植片対宿主病 ⑮免疫不全 ⑯二次性脳腫瘍、脳血管障害 ⑰二次がん などが生じ得る。
参考文献
- Vardiman JW, Thiele J, Arber DA, et al. The 2008 revision of the World Health Organization (WHO) classification of myeloid neoplasms and acute leukemia: rationale and important changes Blood 114: 937-951, 2009
- Horibe K, Saito AM, Takimoto T, et al. Incidence and survival rates of hematological malignancies in Japanese children and adolescents (2006-2010): based on registry data from the Japanese Society of Pediatric Hematology Int J Hematol 98: 74-88, 2013
- Rubnitz JE, Onciu M, Pounds S, et al. Acute mixed lineage leukemia in children: the experience of St Jude Children's Research Hospital Blood 113: 5083-5089, 2009
- Suzuki R. Treatment of advanced extranodal NK/T cell lymphoma, nasal-type and aggressive NK-cell leukemia Int J Hematol 92: 697-701, 2010
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会