診断基準
先天性グリコシル化異常症では筋緊張低下、体重増加不良、精神運動発達遅滞、てんかん、特異顔貌、眼科異常、臀部脂肪沈着・乳頭陥没など皮膚症状、心嚢液貯留、肝機能異常等多彩な症状を認める。
先天性グリコシル化異常症関連の遺伝子は130種類程度知られている。先天性グリコシル化異常症の基本的な診断方法は、代表的な糖タンパクであるトランスフェリンやApoCⅢを用いて等電点電気泳動や質量分析法で糖鎖欠損や構造異常を証明することである。ただし、先天性グリコシル化異常症では糖鎖異常が検出困難な例もあり、遺伝子解析で病的変異を同定することでも診断が可能である。
大基準
- 下記 A.、B.、C. に示すような臨床症状・検査所見をさまざまな程度、組み合わせで認める。
- 質量分析(トランスフェリンやApoCⅢ)あるいは等電点電気泳動において糖鎖異常が存在する(ただし、トランスフェリンの遺伝的多型による糖鎖異常やCDG以外の二次的な糖鎖異常を除外する)。
- 先天性グリコシル化異常症の責任遺伝子のいずれかに病的変異を認める。
A. 臨床症状
- 精神運動発達遅滞、知的障害、筋緊張低下、脳梗塞(脳卒中様発作)、てんかん(乳児早期てんかん脳症を含む)、小脳失調、末梢神経障害、四肢筋萎縮、筋無力症様症候群などの神経症状
- 乳児期哺乳不良、体重増加不良、成長障害、難治性下痢、肝腫大
- 特徴的顔貌、臀部脂肪沈着、乳頭陥没などの皮膚異常、皮膚弛緩症
- 心疾患(心嚢液貯留、肥大型心筋症、拡張型心筋症など)
- 眼科異常、内斜視、網膜色素変性、コロボーマ、無涙症(涙液減少)
- 骨格異常(骨異形成、四肢短縮、頭蓋変形、側彎、後彎など)
- 易感染性、免疫異常
- 胎児水腫
B. 検査所見
低アルブミン血症、AST/ALTなど逸脱酵素上昇、低コレステロール血症、血液凝固因子活性低下、ProteinC、ProteinS、Antithrombin活性低下、コリンエステラーゼ活性低下など。内分泌異常(低血糖、甲状腺機能低下、性腺機能低下)。
C. 画像所見
頭部MRIで小脳虫部の欠損ないし低形成を認める。大脳白質異常や脳梗塞、出血などの例もある。
診断
大基準の 1. および 2. か 3. の一方か両方を満たすこと。参考文献
- 『CDG診断支援プロジェクト』(https://www.wch.opho.jp/hospital/medical/cdg_diagnosis.html)
- 岡本伸彦 先天性グリコシル化異常症 小児科 60:899-905,2019
- 和田芳直 先天性グリコシル化異常症(CDG症候群) 小児科診療(suppl):289,2016
対象の基準(疾病の状態の程度)
運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合
- 版
- :第1版
- 更新日
- :2021年11月1日
- 文責
- :日本小児遺伝学会
日本小児神経学会