診断の手引き

  1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 自己免疫介在性脳炎・脳症
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自己免疫介在性脳炎・脳症

じこめんえきかいざいせいのうえん・のうしょう

Autoimmune encephalitis / encephalopathy

告示

番号:19

疾病名:自己免疫介在性脳炎・脳症

状態の程度

運動障害、知的障害、意識障害、自閉傾向、行動障害(自傷行為又は多動)、けいれん発作、皮膚所見(疾病に特徴的で、治療を要するものをいう。)、呼吸異常、体温調節異常、温痛覚低下、骨折又は脱臼のうち一つ以上の症状が続く場合

診断基準

A 症状

a) 主要症状
急性、あるいは亜急性(通常3か月以内)に進行する以下の中枢神経症状を認める
1. 意識障害
2. 認知機能・記銘力障害
3. 精神・感情障害
4. てんかん発作

b) 支持症状
1. 適切な抗てんかん薬による治療に抵抗性である(てんかん発作がある場合)
2. 多彩なてんかん発作、あるいはfaciobrachial dystonic seizure(FBDS)を呈する
3. 循環器症状、呼吸器症状、腹部症状、立毛、感覚症状などの自律神経症状ないし自律神経発作
4. 卵巣奇形腫などの関連腫瘍の存在、既往
5. 感冒様症状などウイルス感染症の前駆症状
6. 本人や家族に自己免疫疾患が存在


B 検査所見

a) 検査所見
1. 髄液異常(髄液蛋白 40 mg/dl以上、髄液細胞数 5/μl以上、オリゴクローナルバンド陽性)
2. 脳MRIで,脳実質にT2WI/FLAIRで高信号病変を認める
3. FDG-PETで局所性に糖代謝亢進、あるいは脳血流シンチで局所性の血流増加がみられる
4. 脳波で広汎性の背景活動徐波化、局在性あるいは全般性のてんかん性発射を認める

b) 抗体検査
血清あるいは髄液検査で抗神経抗体(抗グルタミン酸レセプター抗体、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体(抗GAD抗体)など)が証明される


C 遺伝学的検査等

該当なし


D 鑑別診断

細菌、ウイルス等による一次性脳炎、痙攣重積型(二相性)急性脳症等の急性脳症、代謝性疾患、脳血管炎、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血等を鑑別する。


E-1 確実例

A-a)の2項目以上+A-b)の1項目以上+B-a)の2項目以上を満たし、B-b)を満たすもの
A-a)の2項目以上+A-b)の1項目以上+B-a)の3項目以上を満たし、Dの鑑別すべき疾患を除外したもの


E-2 疑い例

A-a)の2項目以上+A-b)の1項目以上+B-a)の2項目以上を満たし、Dの鑑別すべき疾患を除外したもの

参考文献

  • 1) 坂本光弘、松本理器、池田昭夫.自己免疫介在性脳炎・脳症.「稀少てんかんの診療指標」日本てんかん学会編.2017
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児神経学会