診断方法
わが国では現在のところ小児におけるMCTDの診断基準はなく、厚生労働省研究班(2004)の診断基準を用いて診断されることが多いが、小児例では診断感度が30%と低く、多くの小児期MCTD症例の診断が出来ず治療機会を逸している可能性がある。一方横田による小児混合性結合組織病診断基準案では感度は診断時で89.4%、特異度は90%であることからより多くの小児期MCTD症例の診断が可能となると考えられる1)2)3)。さらに本診断基準ではSLEなど小児期発症のリウマチ性疾患を重複して診断される可能性があるため除外項目を追加した。
- I. 中核的所見
- 1. レイノー現象
- 2. 抗U1-RNP抗体陽性
- II. 臨床症状および検査所見
- 1. 手指の腫脹・浮腫
- 2. 顔面紅斑
- 3. 関節痛・関節炎
- 4. 筋炎(筋原性酵素上昇、筋電図所見、生検所見)
- 5. 高γグロブリン血症(血清分画の20%以上)
- 6. リウマトイド因子陽性
- 7. 白血球減少(<4000/μL)、血小板減少(<10万/μL)
- *寒冷負荷陽性、サーモグラフィー所見など客観的評価が望ましい
- **斑紋型抗核抗体高値陽性を伴う
- III. 除外項目
- 全身性エリテマトーデスなど他の小児リウマチ性疾患の診断基準を満たさないこと
以上の中核的所見2項目を満たし、かつ臨床症状および検査所見7項目中最低3項目を満たし、さらにSLEなど他の小児リウマチ性疾患が除外される場合、小児混合性結合組織病と診断する。
註:小児例は発症初期にDMやSSc様所見を呈することは少なくSLE様所見が主な所見であることが多く、SLEとの鑑別が困難あるいはSLEと診断される症例が認められる4)。このため小児期MCTDでの診断では抗U1-RNP抗体陽性とレイノー現象の二つの所見を中核的所見として捉え、臨床症状として手背の腫脹、多関節炎、手指の皮膚硬化、筋力低下を、そして検査所見として高γ-グロブリン血症、リウマチ因子、抗DNA抗体などを用いて診断をすすめる3)。
参考文献
- 1)
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病に関する研究班. 混合性結合組織病の治療ガイドライン 改訂第3版. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病に関する研究班. 2004
- 2)
- Yokota S. et al. Mixed connective tissue disease in childhood: a nationwide retrospective study in Japan. Acta Paediatr Jpn. 39(2):273-6. 1997
- 3)
- 横田俊平, et al. 小児期発症型混合性結合組織病. 領域別症候群シリーズ免疫症候群(上巻). (31):471-4. 2000
- 4)
- 宮前多佳子. 小児期発症全身性エリテマトーデスと混合性結合組織病の臨床的特徴の差異と抗U1-RNP抗体の意義. 日本臨床免疫学会雑誌. 31(5):405-14. 2008
- 5)
- Cassidy, James T. Textbook of pediatric rheumatology, 6th ed. Saunders, 2010
- 6)
- 横田俊平, 平成20年度厚生労働科学研究「小児期のリウマチ・膠原病の難治性病態の診断と治療に関する研究」報告. 2008
- 7)
- Ito S. Glomerulonephritis in children with mixed connective tissue disease. Clin Nephrol. 66(3):160-5. 2006
当該事業における対象基準
治療で非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬、免疫調整薬、免疫抑制薬、抗凝固療法、γグロブリン製剤、強心利尿薬、理学作業療法、生物学的製剤又は血漿交換療法のうち一つ以上を用いている場合
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児リウマチ学会