診断の手引き

  1. 膠原病
  2. 大分類: 膠原病疾患
6

ベーチェット(Behçet)病

べーちぇっとびょう

Behçet’s disease

告示

番号:11

疾病名:ベーチェット病

診断方法

診断方法

A. 診断上 重要な症状

1. 主症状

  1. 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
  2. 皮膚症状
    1. 結節性紅斑様皮疹
    2. 皮下の血栓性静脈炎
    3. 毛嚢炎様,痤(ざ)瘡様皮疹
      参考所見:皮膚の被刺激性亢進
  3. 眼症状
    1. 虹彩毛様体炎
    2. 網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)
    3. 以下の所見があれば、a. b. に準じる
      a. b. を経過したと思われる虹彩後癒着、水晶体上色素沈着、網脈絡膜萎縮、視神経萎縮、併発白内障、続発緑内障、眼球癆
  4. 外陰部潰瘍

2. 副症状

  1. 変形や硬直を伴わない関節炎
  2. 副睾丸炎
  3. 回盲部潰瘍で代表される消化器病変
  4. 血管病変
  5. 中等度以上の中枢神経病変
B. 診断上 参考となる検査所見
  1. 針反応(Pathergy)
    20 ~ 22 G の太めの針を用い,前腕の 3 ヶ所を同じ針で 45 度の角度で 3 ~ 5 mm の深さに刺す。24 ~ 48 時間後に確認し,発赤径 2 mm 以上を陽性と判定する。
  2. 炎症反応(赤沈値の亢進,血清CRPの陽性化,末梢血白血球数の増加,補体価の上昇)
  3. HLA-B51(B5) あるいは HLA-A26 の陽性
  4. IgD 高値(10 mg/dL 以上)
  5. 病理所見
C. 鑑別疾患

急性薬物中毒、多型滲出性紅斑、慢性再発性アフタ症、化膿性毛嚢炎、尋常性?(ざ)瘡、結節性紅斑、サルコイドーシス、若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、クローン病、潰瘍性大腸炎、高安病、多発性硬化症、結核

D. 診断判定基準

1. Definitive

  1. 経過中に 3 主症状以上、あるいは 2 主症状と 2 副症状が出現したもの
  2. 経過中に定型的眼症状とその他の 1 主症状、あるいは定型的眼症状と 2 副症状が出現したもの

2. Probable

  1. ひとつ以上の主症状が出現するが definitive の条件を満たさないもの
  2. 定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの

3. 特殊病変

a. 腸管(型)ベーチェット病
腹痛、潜血反応の有無を確認する。
b. 血管(型)ベーチェット病
大動脈、小動脈、大小静脈障害の別を確認する。
c. 神経(型)ベーチェット病
頭痛、麻痺、脳脊髄症型、精神症状などの有無を確認する。
E. 診断判定基準を使用する際の注意事項
  1. 病歴を確認し、経過中に出現した症状をすべて加算して診断する。
  2. 主症状・副症状とも、非典型例は取り上げない。
  3. 検査所見は、診断の参考となるが必須ではない。
  4. 鑑別疾患をすべて除外できる症例に限り診断する。
  5. probable は、小児膠原病の診療に精通した医師によって明らかに小児期ベーチェット病が原因であると判断され、かつ治療(外用薬などの局所療法のみの場合は除く)を継続的に受けているものを診断する。
  6. 特殊病変は、 definitive の所見が揃わなくても強い腸管症状・血管症状・神経症状を示し、明らかに小児期ベーチェット病が原因と判断されたものを診断する。

認定基準

上記の D. 診断判定基準 のいずれかに該当し、E. 診断判定基準を使用する際の注意事項の要件を満たしている場合を、小児慢性特定疾患の対象とする。

小児では成人発症例と比較して、主症状の項目の出現頻度が低い可能性が示唆されている。
従って小児慢性特定疾病の認定対象は、成人の病型診断基準における「疑い」を含め小児ベーチェット病と診断し、かつ継続的に治療を行っている症例を対象とする。

註:
日本小児リウマチ学会 ベーチェット病ワーキンググループによる全国調査の結果、厚生労働省ベーチェット病診断基準に当てはめた場合、完全型 2%、不全型 48%、特殊病変 10%、疑い 40% の症例において、継続的な治療が必要であることが判明した。

成人例で特定疾患の認定対象になる症例(完全型・不全型・特殊病変に分類される)と認定対象にならない症例(疑いに分類される)の臨床像に違いがあるかを検討した結果、認定対象群と継続的治療を受けている認定非対象群の予後の間に違いは存在しないことがわかった。また、認定対照群と非認定対照群で継続されている治療についても相違が認められなかった。

以上の結果より、小児においては継続的な治療を必要とする「疑い」の症例についても、小児慢性特定疾病の対象とするべきであると結論した。

参考文献

  1. 厚生労働省特定疾患ベーチェット病調査研究班の診断基準(2003年)http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/108_s.pdf
  2. Isabelle Kone-Paut, Martha Darce-Bello, Farahd Shahran et.al. Registries in rheumatological and musculoskeletal conditions. Paediatric Behc¸ et’s disease: an international cohort study of 110 patients. One-year follow-up data Rheumatology 2011;50:184-188
  3. International Team for the Revision of International Criteria for Behçet’s Disease (ITR-ICBD) The International Criteria for Behçet’s Disease (ICBD):a collaborative study of 27 countries on the sensitivity and specificity of the new criteria. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 28:338-47, 2014
  4. 山口賢一, 藤川 敏:小児Behçet病 日本臨床 ,2015 (in press)

当該事業における対象基準

治療で非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬、免疫調整薬、免疫抑制薬、抗凝固療法、γグロブリン製剤、強心利尿薬、理学作業療法、生物学的製剤又は血漿交換療法のうち一つ以上を用いている場合

:バージョン1.1
更新日
:2015年7月13日
文責
:日本小児リウマチ学会