診断の手引き

  1. 膠原病
  2. 大分類: 膠原病疾患
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皮膚筋炎/多発性筋炎

ひふきんえん/たはつせいきんえん

juvenile dermatomyositis, polymyositis; PM; DM

告示

番号:10

疾病名:皮膚筋炎/多発性筋炎

診断方法

診 断

  1. 皮膚症状
    1. ヘリオトロープ疹 : 両側又は片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑
    2. ゴットロンの徴候:手指関節背面の角質増殖や皮膚萎縮を伴う紫紅色紅斑
    3. 四肢伸側の紅斑:肘,膝関節などの背面の軽度隆起性の紫紅色紅斑*1
    4. 皮膚生検で皮膚筋炎に一致する所見*2
  2. 筋症状:上肢又は下肢の近位筋の筋力低下*3
  3. 画像診断:MRIで筋炎を示す所見がある:T2強調/脂肪抑制画像で高信号,T1強調画像で正常信号
  4. 生化学的検査:血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼ又はアルドラーゼ)の上昇
  5. 免疫学的検査:筋炎特異的自己抗体陽性*4
  6. 病理組織学的検査:筋生検で筋炎の病理所見(筋線維の変性及び細胞浸潤)
診断基準
  1. 1.皮膚症状 の a. ~ c. の 1 項目以上と 2.筋症状 を満たし、かつ経過中に 3. ~ 6.の項目中 2 項目以上を満たすものを古典的皮膚筋炎とする。
  2. 典型的皮膚症状 a. ~ c. の 1 項目以上を満たし、皮膚生検で皮膚筋炎に一致する病理学的所見 d. がある場合、筋炎を示す所見(2. ~ 6.)が無くても無筋症性皮膚筋炎(Amyopathic DM: ADM)と診断する。
  3. 1.皮膚症状 を欠き、2.筋症状 を満たし、3. ~ 6. の項目中 2 項目以上を満たせば多発性筋炎と診断する。

除外項目

感染による筋炎、好酸球性筋炎などの非感染性筋炎、薬剤誘発性ミオパチー、内分泌異常・先天代謝異常に伴うミオパチー、 電解質異常に伴う筋症状、筋ジストロフィーその他の先天性筋疾患、中枢性ないし末梢神経障害に伴う筋力低下、乾癬、湿疹、アレルギーなど。

参考条項

以下の症状や合併症をもつ患者においては基礎疾患として若年性皮膚筋炎を考慮する必要がある。

  1. 皮膚所見:爪周囲紅斑、前頚部~上胸部紅斑(V-sign)、肩~上背部紅斑(ショール徴候)、皮膚潰瘍、レイノー症状
  2. 筋炎所見:筋痛・筋把握痛
  3. 呼吸器:間質性肺炎(進行例では乾性咳嗽・労作時呼吸困難)、呼吸筋力低下、鼻声
  4. 消化器:嚥下困難、消化管潰瘍・出血
  5. 心電図異常(ブロック、期外収縮、ST-T変化など)・心筋障害・心膜炎。
  6. 非破壊性関節炎
  7. 発熱、全身倦怠、体重減少、易疲労感などの非特異的症状がしばしば見られ、まれに全身性浮腫を呈することがある。
  8. 爪床部の毛細血管消失・拡張・ループ形成は特異性はないがしばしば認められる。
  9. 石灰化(皮膚・皮下組織、筋・筋膜、骨・関節部)
 

註 釈

*1
潰瘍性病変や二次感染を伴う場合は皮疹が修飾されるため注意を要する。
*2
角質増加、基底角化細胞の空胞化、メラニン沈着、血管周囲リンパ球浸潤、真皮の浮腫増加、ムチン沈着、表皮肥厚もしくは表皮委縮などが見られるが、皮膚病理所見のみでは若年性皮膚筋炎とSLEの鑑別は困難なことが多いため、単独では皮膚所見として採用しない。
*3
筋力低下はそれまで可能であった運動(階段昇降、鉄棒など)が出来なくなった、つまずきやすいなどの軽度のものから座位からの起立不能、寝返り不能などの高度のものまである。
*4
筋炎特異的自己抗体で現時点では一般的に測定可能なものは抗Jo-1抗体のみであるが、一部施設での測定が可能である。陽性時には診断的価値は高く、一部は今後一般的な検査として実施可能となると予想される()。

表. 報告されている筋炎特異的自己抗体

参考文献

  1. Bohan A, Peter JB. Polymyositis and dermatomyositis. N Engl J Med 1975; 292: 344-7.
  2. 厚生省自己免疫疾患調査研究班診断基準(1992)
  3. Brown VE, Pilkington CA, Feldman BM, et al. An international consensus survey of the diagnostic criteria for juvenile dermatomyositis (JDM). Rheumatology 2006; 45: 990-3.

当該事業における対象基準

治療で非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬、免疫調整薬、免疫抑制薬、抗凝固療法、γグロブリン製剤、強心利尿薬、理学作業療法、生物学的製剤又は血漿交換療法のうち一つ以上を用いている場合

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児リウマチ学会