診断の手引き

  1. 内分泌疾患
  2. 大分類: 消化管ホルモン産生腫瘍
74

ガストリノーマ

がすとりのーま

Gastrinoma

告示

番号:40

疾病名:ガストリノーマ

診断方法

鑑別診断の要点

ガストリノーマの鑑別診断は、高ガストリン血症と胃内 pH < 2 の酸性状態が同時に存在することを証明すること。

A. 鑑別に不可欠な検査

  1. 空腹時の血清ガストリン濃度(血清IRG)測定(正常値:<150pg/mL)
  2. 胃酸分泌測定検査,または 24時間胃内pHモニター検査
    胃酸過剰分泌の診断:pH < 2以下 holding time: > 90%

B. 刺激試験

  1. セクレチン負荷試験
    セクレチン 2 U/kg体重を静注して、前、2分、4分、6分後に 採血して血清IRGの上昇の有無を調べる
    ガス卜リノーマの診断は,前値に比べ100-200 pg/mLの上昇とされている。(機能亢進性 G 細胞症でも陽性になることがあるので,注意が必要)。
  2. カルシウム負荷試験
    8.5% グルコン酸カルシウム を30秒かけて静注して、前、2分、4分、6分、10分後に採血して,血清IRG の上昇の有無を調べる。
    陽性は前値に比し20%以上の上昇(機能亢進性 G 細胞症でも陽性の場合がある)。

C. MEN1 の有無を調べる検査

血清カルシウム濃度測定と血清インタクトPTH測定(ガストリノーマの約20%は多発性内分泌腫瘍1型を伴う)。

参考

確定診断には、血清ガストリン濃度の高値と胃酸の過剰分泌が共存することを証明する。

  • 空腹時血清ガストリン濃度と、胃酸分泌測定検査あるいは 24 時間 pHモニター検査が必須であり、カルシウム静注試験またはセクレチン静注試験が有用である。
  • MEN1 の合併の有無を診断するために、補正血清カルシウム濃度測定とインタクト PTH 測定が有用である。
  • 局在診断のため、US、CT、MRI、EUS検査、SASI (ASVS)テストが有用である。
  • 血清ガストリン濃度は、ガストリノーマ患者の 2/3 で正常上限値の 10 倍以下である。1,000 pg/mL 以上の症例ではガストリノーマが強く疑われるが、胃酸分泌抑制薬服用がなく、萎縮性胃炎もない患者で血清ガストリン濃度が 150 以上 1,000 pg/mL 未満の症例では、鑑別のため負荷試験を行うことが望ましい。
  • 胃切除後の患者では 80 pg/mL 以上で高ガストリン血症と判断する。
  • 胃酸測定は 24 時間胃内 pH モニタリングもしくは空腹時の胃内 pH を測定し、24 時間モニタリングでは pH<2 holding time が 90%以上のとき、空腹時 pH では pH<2 をもって過酸状態と判断する。
  • ガストリノーマ患者の 99%で空腹時胃内 pH が 2 以下である。
  • 局在診断として画像診断(US、CT、MRI、十二指腸内視鏡)を行う。
  • 微小なガストリノーマの機能性局在診断として、セクレチンあるいはカルシウム溶液を用いる SASI テストが有用である。
  • 発性内分泌腫瘍1型(MEN1)に伴うことがある。MEN1 のガストリノーマは全例十二指腸に発生しており、十二指腸原発のガストリノーマでは特に MEN1 を強く疑って検索を進める必要がある。

参考文献

  1. 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET) 診療ガイドライン 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン作成委員会
  2. 土井隆一郎:ガストリノーマ.日本臨床 69 suppl 2, 585-580, 2011

当該事業における対象基準

治療で補充療法、機能抑制療法その他薬物療法のいずれか1つ以上を行っている場合

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児内分泌学会