診断方法
I. 主症候
- 男児の主症候
- 9 歳未満で精巣、陰茎、陰嚢等の明らかな発育が起こる。
- 10 歳未満で陰毛発生をみる。
- 11 歳未満で腋毛、ひげの発生や声変わりをみる。
- 女児の主症候
- 7 歳 6ヶ月未満で乳房発育がおこる。
- 8 歳未満で陰毛発生、または小隠唇色素沈着等の外陰部成熟、あるいは腋毛発生がおこる。
- 10 歳 6ヶ月未満で初経をみる。
II.副症候
発育途上で次の所見をみる(註 1)。
- 身長促進現象:身長が標準身長の 2.0SD 以上。または年間成長速度が2年以上にわたって標準値の1.5SD 以上。
- 骨成熟促進現象:骨年齢 - 暦年齢≧2 歳 6ヶ月を満たす場合。
または暦年齢 5 歳未満は骨年齢/暦年齢≧1.6 を満たす場合。 - 骨年齢/身長年齢≧1.5 を満たす場合。
III.検査所見
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進と性ステロイドホルモン分泌亢進の両者が明らかに認められる(註 2)。
IV.除外規定(註 3)
副腎性アンドロゲン過剰分泌状態(未治療の先天性副腎皮質過形成(註 4)、副腎腫瘍など)、性ステロイドホルモン分泌性の性腺腫瘍、McCune-Albright 症候群、テストトキシコーシス、hCG産生腫瘍、性ステロイドホルモン(蛋白同化ステロイドを含む)や性腺刺激ホルモン (LHRH、hCG、hMGを含む)の長期投与中(注射、内服、外用(注5) )、 性ステロイドホルモン含有量の多い食品の大量長期摂取中などの全てを否定する。
V. 参考所見
中枢性思春期早発症を来す、特定の責任遺伝子の変異(GPR54、KISS-1、MKRN3、DLK1)が報告されている。
診断基準
確実例:
- I の 2 項目以上と III、IV を満たすもの。
- I の1項目および II の 1 項目以上と III、IV を満たすもの。
疑い例:
I の年齢基準を 1歳高くした条件で、その確実例の基準に該当するもの。なお疑い例のうちで、主症状発現以前の身長が -1SD 以下のものは、治療上は確実例と同等に扱うことができる。
病型分類
中枢性思春期早発症が診断されたら、脳の器質的疾患の有無を画像診断などで検査し、器質性、遺伝子異常に起因する、特発性の病型分類をする。
- (註 1)
- 発病初期には、必ずしもこのような所見を認めるとは限らない。
- (註 2)
- 各施設における思春期の正常値を基準として判定する。なお、基準値のない施設においては下記の 別表1 に示す血清ゴナドトロピン基準値を参考にする。
- (註 3)
- 除外規定に示すような状態や疾患が現在は存在しないかが、過去に存在した場合には中枢性思春期早発症をきたしやすいので注意する。
- (註 4)
- 先天性副腎皮質過形成の未治療例でも、年齢によっては中枢性思春期早発症をすでに併発している場合もある。
- (註 5)
- 湿疹用軟膏や養毛剤等の化粧品にも性ステロイトドホルモン含有のものがあるので注意する。
別表 1
当該事業における対象基準
治療で補充療法、機能抑制療法その他薬物療法のいずれか1つ以上を行っている場合
- 版
- :バージョン2.0
- 更新日
- :2020年6月26日
- 文責
- :日本小児内分泌学会