診断の手引き

  1. 内分泌疾患
  2. 大分類: 甲状腺機能低下症
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甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌低下症(先天性に限る。)

こうじょうせんしげきほるもんぶんぴつていかしょう(せんてんせいにかぎる。)

Thyroid-stimulating hormone (TSH) deficiency

告示

番号:29

疾病名:甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌低下症(先天性に限る。)

診断方法

1979年以降、日本で生まれた全ての新生児は、日齢 4~6 に採取された乾燥ろ紙血液中の TSH を測定し、各自治体の定める基準値に従って、再検査や要精密検査の判定が行われる(新生児マススクリーニング)。

ろ紙血中 THS は、東京都および神奈川県では血清値表示されているが、それ以外の道府県・指定都市では、全血値表示となっている(血清値 = 全血値 × 1.6)。

直ちに精密検査とする TSH値は、自治体の半数以上が 30 mIU/L(全血値)であるが、 最も低い千葉県の 15 mIU/L から開始当初のままの 50 mIU/L まで様々である。
要再採血とする TSH カットオフ値も、過半数は 10 mIU/L が過半数であるが、7.5 ~ 12 mIU/Lと幅がある。


I. 主症候

  1. 耐寒能の低下
  2. 不活発
  3. 皮膚乾燥
  4. 徐 脈
  5. 脱 毛
  6. 発育障害

II. 検査所見

  1. 血中TSHは高値ではない(注意1)。
  2. TSH分泌刺激試験(TRH負荷など)に対して、血中TSHは低反応ないし無反応。但し、視床下部性の場合は、TRHの1回または連続投与で正常反応を示すことがある(注意1、2)。
  3. 血中甲状腺ホルモン(free T4、free T3など)の低値(注意3)。

III. 除外規定

TSH分泌を低下させる薬剤投与を除く。

IV. 注意点

  1. 中枢性甲状腺機能低下症の約半数では、血中TSHは正常ないし軽度高値を示す。生物活性の乏しいTSHが分泌されている可能性がある。TRH負荷前後の血中freeT3増加率は、原発性甲状腺機能低下症を除外できれば、生物活性の乏しいTSHが分泌されている可能性の鑑別に参考になる。
  2. TRH受容体異常によって、血中TSHの低値と分泌刺激試験での血中TSHの低反応が認められることがある。
  3. 血中free T3が低値、free T4が正常の場合には、low T3 syndromeが疑われる。

[診断の基準]
確実例 I の 1項目以上と II の 3 項目を満たす。

当該事業における対象基準

治療で補充療法、機能抑制療法その他薬物療法のいずれか1つ以上を行っている場合

:バージョン1.1
更新日
:2015年8月14日
文責
:日本小児内分泌学会