診断の手引き

  1. 慢性心疾患
  2. 大分類: 右室二腔症
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右室二腔症

うしつにくうしょう

Double-chambered right ventricle

告示

番号:2

疾病名:右室二腔症

診断方法

【臨床所見】
乳児期には右室内圧差はまだほとんどないので,心室中隔欠損の大きさに応じて左-右短絡が生じ, それよる臨床所見を生じる. 短絡の多い場合には心不全を生じて, 多呼吸や体重増加不良などの所見を呈する. 狭窄が高度になり, チアノーゼが出現すると,運動時に呼吸困難を生じるようになる. 通常, 右室肥大が生じても, Fallot四徴症のような隠据や運動障害はない. 聴診では胸骨左縁に表在的に粗く長い収縮期雑音をきく. II音は分裂してきかれ, 亢進はない.

【胸部X線】
合併する心室中隔欠損の所見がある. それ以上の異常を認めるのは困難である.心室中隔欠損を合併するものの15%に右側大動脈弓を合併する。

【心電図】
通常洞調律である. 前額面平均電気軸は+40度ないし+120度である.右室肥大の所見としてもR, V1のT波が上向きになり, そのR波が高い. 心室中隔欠損の左-右短絡を反映して左室肥大がある.

【心エコー図】
右室の長軸面の断層心エコー図で漏斗部の下, 右室内に異常筋束を直接描出することができる。近位側右室の圧が高いために心室中隔下方が左室側に偏位して pseudo-overriding を示す。心室中隔欠損を合併する場合には, 膜様部心室中隔欠損があり, 膜様部瘤が認められることもある. 大動脈弁下部に狭窄のある場合もある.

【心臓カテーテル・造影所見】
カテーテルを右室から肺動脈へ進めると, 右室内に狭窄があり, 右室が近位の高圧室と遠位の低圧室に分かれている. 高圧室と低圧室との間に20~150 mmHgの圧差がある. 心室中隔欠損は通常高圧室に聞くので, 右室高圧室で酸素飽和度のstep -up がある. 高圧室の圧が左室圧より高い場合には右-左短絡を生じて大動脈血の酸素飽和度が低下する.右室造影を高圧室で行うと, 右室の中央に右上から左下に走る太い肉柱が写る.

■診 断
心エコー図で漏斗部の下, 右室内に異常筋束
心臓カテーテルで右室内に狭窄があり, 右室が近位の高圧室と遠位の低圧室に分かれている

■鑑 別
ファロー四徴症

当該事業における対象基準

治療中又は次の①から⑨のいずれかが認められる場合
①肺高血圧症(収縮期血圧40mmHg以上)
②肺動脈狭窄症(右室-肺動脈圧較差20mmHg以上)
③2度以上の房室弁逆流
④2度以上の半月弁逆流
⑤圧較差20mmHg以上の大動脈狭窄
⑥心室性期外収縮、上室性頻拍、心室性頻拍、心房粗細動又は高度房室ブロック
⑦左室駆出率あるいは体心室駆出率0.6以下
⑧心胸郭比 60%以上
⑨圧較差20mmHg以上の大動脈再狭窄

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児循環器学会