診断方法
【臨床所見】
乳児期から重篤な心不全症状を呈し、多呼吸、多汗、体重増加不良等を認める。
聴診では、心室中隔欠損による胸骨左縁下部の汎収縮期雑音と肺動脈第2音の亢進を認める。
多量の左右短絡によって重度の肺高血圧を呈し、生後6ヵ月ごろから肺血管病変が進行する。
肺血管病変、左側房室弁閉鎖不全、合併心奇形の有無などが予後を左右する。
【胸部X線】
乳児期から肺うっ血が強く、房室弁閉鎖不全があると心拡大、肺うっ血はさらに強くなる。
肺血管病変が進行すると肺野の末梢は明るくなる。
【心電図】
心電図所見は診断的価値が高く、左軸偏位、PQ間隔の延長、不完全右脚ブロック、両心肥大を特徴とする。
scoopingが強いと刺激伝導路系の後下方への偏位が大きくなり、左軸偏位が強くなる傾向がある。
【心エコー図】
・流出部心室中隔が短縮し、心房中隔下部と心室中隔に欠損を認める。
・共通前尖の健索が心室中隔と結合するタイプ(Rastelli A型)、右室前乳頭筋と結合するfree-floating(C型)タイプ、両者の中間(B型)にわけられる。
・左室が小さい例では乳頭筋の位置異常、重複房室弁口、左室流出路狭窄、大動脈縮窄などの検索が必要。
【心臓カテーテル・造影所見】
カテーテルは一次孔欠損を通して容易に左室へ入る
肺血圧と体血圧は等しい。肺血管病変の進行が疑われた場合は酸素負荷等を行い肺血管の反応性を評価する。
左室造影は診断的価値が高く、正面像でgoose-neck signと呼ばれる特徴的な所見を呈する。また、拡張期に共通房室弁口を認め、収縮期に心室間交通を介して左右短絡を認める。
肺静脈造影では心房中隔下部から左右短絡を認める。
■診 断
心電図、心エコー図、左室造影所見は特徴的なため診断に有用である。
■鑑 別
完全型で一次孔欠損を伴わない場合、またはスリット状の場合は、いわゆるECD typeの心室中隔欠損や、心室中隔欠損と僧帽弁cleftの合併例との鑑別が必要となる。
複雑心奇形を伴う場合には、心房内臓錯位症を念頭において診断を進める。
当該事業における対象基準
治療中又は次の①から⑨のいずれかが認められる場合
①肺高血圧症(収縮期血圧40mmHg以上)
②肺動脈狭窄症(右室-肺動脈圧較差20mmHg以上)
③2度以上の房室弁逆流
④2度以上の半月弁逆流
⑤圧較差20mmHg以上の大動脈狭窄
⑥心室性期外収縮、上室性頻拍、心室性頻拍、心房粗細動又は高度房室ブロック
⑦左室駆出率あるいは体心室駆出率0.6以下
⑧心胸郭比 60%以上
⑨圧較差20mmHg以上の大動脈再狭窄
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児循環器学会