診断の手引き

  1. 慢性心疾患
  2. 大分類: 冠動脈起始異常
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左冠動脈肺動脈起始症

ひだりかんどうみゃくはいどうみゃくきししょう

Abnormal origin of left coronary artery from pulmonary artery

告示

番号:10

疾病名:左冠動脈肺動脈起始症

診断方法

左冠動脈肺動脈起始症 (Bland-White-Garlandブランドーホワイトーガーランド症候群)

【心電図】
左冠状動脈領域の心筋虚血を生じる
・aVL誘導の異常Q波
・V1, V2 に前壁の虚血性変化(深いQ波、R波減高、ST上昇、T波陰転)
・V5, V6 に側壁の虚血性変化(深いQ波、R波減高、ST上昇、T波陰転)
※成人急性心筋梗塞の場合と異なり、ST上昇や血清酵素上昇は、乳幼児では 1/3かそれ以下で診られるのみである。

【心エコー図】
・右冠状動脈が太い
・約70~80%で左冠状動脈起始部が肺動脈から起始して見える。
・残りの約20~30%では、左冠状動脈が大動脈から起始するように見える。
・カラードップラーで左冠状動脈から肺動脈への血流が見える。
・左房、左室の拡大
・左室の収縮性低下
・しばしば僧帽弁逸脱があり、僧帽弁閉鎖不全が認められる。

【心臓カテーテル・造影所見】
・大動脈造影で太い右冠状動脈がまず造影され、続いて側副血管と左冠状動脈が写り、肺動脈が薄く写る。右冠状動脈の選択的造影でより明らかとなる。
・左室造影では拡大して収縮の少ない左室
・僧帽弁閉鎖不全例では左房への逆流
・乳児では肺動脈・右室の収縮期圧は 40~50mmHg に上昇

【その他の画像診断】
本症に特異的な所見として、心筋シンチグラフィにて左冠状動脈領域(左室前壁、側壁、心尖部)に還流欠損を認める。

■診 断
乳幼児の心筋疾患および僧帽弁閉鎖不全を呈する。
心電図の aVL 異常Q波は本症を疑う手がかりとなる。
心エコーにて、右冠状動脈の拡大および左冠状動脈の肺動脈起始の所見で診断となる。
診断は、心エコー、心臓カテーテル検査で確定

■鑑 別
心内膜線維弾性症、うっ血型心筋症、各種の僧帽弁閉鎖不全

当該事業における対象基準

治療で強心薬、利尿薬、抗不整脈薬、抗血小板薬、抗凝固薬、末梢血管拡張薬、β遮断薬又は肺血管拡張薬のいずれかが投与されている場合

次の①から⑨のいずれかが認められる場合

①肺高血圧症(収縮期血圧40mmHg以上)
②肺動脈狭窄症(右室-肺動脈圧較差20mmHg以上)
③2度以上の房室弁逆流
④2度以上の半月弁逆流
⑤圧較差20mmHg以上の大動脈狭窄
⑥心室性期外収縮、上室性頻拍、心室性頻拍、心房粗細動又は高度房室ブロック
⑦左室駆出率あるいは体心室駆出率0.6以下
⑧心胸郭比 60%以上
⑨圧較差20mmHg以上の大動脈再狭窄

以上の何れかを満たす場合

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児循環器学会