診断方法
臨床症状や検査所見により疑い、確定診断は遺伝子診断によって行う。
臨床症状
- 眼症状水晶体上皮の遊走障害をきたすため、両側性の先天性白内障はほぼ必発である。シュレム管の形成障害による先天性緑内障(牛眼)もみられる。そのほか、角膜変性(線維組織増生)、斜視、眼振、小眼球症などの異常がみられる。
- 神経症状認知障害、精神発達遅滞、痙攣、行動異常、筋緊張低下などがみられる。認知障害・発達遅滞の程度は個人差が大きいが、大半は軽~中程度の知能指数となる。痙攣は約半数にみられる。出生時から筋緊張低下がありfloppy infantとなり、深部腱反射は減弱する。
- 腎症状新生児早期からの近位尿細管機能障害および10歳代からの糸球体障害がみられる。尿細管障害ではいわゆるFanconi症候群を呈し、近位型RTAや汎アミノ酸尿、尿糖陽性などをきたす。糸球体障害は緩徐に進行するため、一般には無症状である。
- その他近位型RTAによる低リン血症・代謝性アシドーシスや筋緊張低下により、くる病骨軟化症が発生する。出生時の体格は正常範囲内だが最終身長は低くなる。関節病変(関節腫脹、関節炎)や線維腫、歯嚢胞、停留睾丸などもみられる。
検査所見
- 近位型RTAにより血中HCO3-低下、低カルシウム血症、高クロール血症、低リン血症、ALP上昇、低カルニチン血症などがみられる。10歳以降、腎機能の低下に伴いBUNやCrの上昇がみられるようになり、進行に従い1.25-(OH)2ビタミンDも低下する.本症では筋肉量が少ないため、腎障害の程度に比してCr上昇の程度は小さい。そのほか、筋原性にトランスアミナーゼ、LDH、CKの軽度上昇がみられる。
- 尿検査では、1日尿量の増加、低比重尿、タンパク尿(アルブミン尿および尿細管由来低分子タンパク尿)、汎アミノ酸尿、糖尿高カルシウム尿高リン酸尿などを呈する。
- 画像検査では、長管骨X線検査で、杯状骨端・骨皮質の菲薄化などのくる病所見を呈する、脳MRI・T2強調画像で脳質周囲白質、汎卵円を中心とした高信号域および微細嚢胞がみられるが、臨床症状とは相関しない。
- 腎病理所見では、尿細管上皮の萎縮と間質の線維化、年長例では糸球体基底膜の肥厚、足細胞の癒合、硝子化が出現し、腎不全に陥った例では腎髄質の石灰化がみられる。
遺伝子検査(確定診断)
OCRL1遺伝子変異または皮膚培養線維芽細胞などを用いたOCRL1活性低下を証明する。
当該事業における対象基準
治療で薬物療法を行っている場合又は腎移植を行った場合
- 版
- :バージョン1.1
- 更新日
- :2015年5月23日
- 文責
- :日本小児腎臓病学会