診断方法
臨床症状および画像検査によって診断する。
- 臨床症状
- 診断画像検査
腎以外で生じる動静脈痩と同様にシャント血流量が多ければ静脈還流の増大による心拍出量の増加で収縮期高血圧をきたす。この際、心臓が静脈還流量の増大を代償できなければ、高心拍出性の心不全を生じる。また、比較的近位部の動脈において静脈との交通が生じた場合、そこよりも遠位部は低灌流となりレニン分泌が刺激されることがあるこのような場合には腎血管性高血圧の病態に類似した、レニン・アンジオテンシン系亢進による高血圧を呈する。
先天性(cirsoid type)では顕性血尿の頻度が高い。これはnidusが腎孟腎杯の近傍に発達することが多く、容易に穿破するためであると考えられている。後天性のほとんどは無症候性であり、他の疾患の精査にて施行された画像検査で偶然発見されることが多い2。
続発性では腹部血管雑音の聴取が診断のきっかけとなることがある。原因不明の高血圧や心不全症例において腹部血管雑音が聴取された場合には、腎動脈狭窄のみならず本症も想起しておく必要がある。
かつては確定診断に血管造影が必須であった腎動脈造影にて動脈相早期に腎静脈が造影されれば診断が確定する最近では、multi-detector CT(MDCT)の普及により、より低侵襲で確定診断が可能となり、同時に3次元的に流入動脈および流出静脈の描出ができるようになっている。
造影剤が不要な MR angiography や超音波検査の有用性も報告されている。特にカラードプラ超音波検査は非侵襲的であり、本症の診断および経過観察に優れている。なかでも腎生検後に生じた腎動静脈痩の診断に非常に有用であり、術後仮性動脈瘤の検出能も高い3,4。カラードプラで検出される典型的な像は、組織の振動と乱流によるモザイク像である。
参考文献
- Ge Chechile OA, et al: Aneurysm and arteriovenous malformation. In:Renal Vascular Disease (ed by Novic AC、 et al), p35-46, WB Saunders, London, 1996.
- Takaha M, et al: Intrarenal arteriovenous malformation. J Urol 124: 315-318, 1980.
- Deane C, et al: Arteriovenous fistula in renal transplants:color Doppler ultrasound observations. Urol Radiol 13: 211-217, 1992.
- Rashjd M, et al: Intrarenal post traumatic pseudoaneurysm-US Gcolor Doppler diagnosis: a case report with review of literature. Emerg Radiol14: 257-260, 2007.
当該事業における対象基準
腎機能の低下(おおむね3か月以上、血清Crが年齢性別ごとの中央値(別表参照)の1.5倍以上持続)がみられる場合又は腎移植を行った場合
表. 年齢・性別毎の血清クレアチニンの中央値および腎機能低下基準値



- ※
- 腎機能低下基準値は、中央値の1.5倍値。12歳以上は男女別となっている。
- ※
- 17歳以上も近年の標準測定法である"酵素法"での正常値(男:0.83、女性:0.63(Jaffe法だと1.03、0.83 相当))を用いて1.5倍として計算。
- 版
- :バージョン1.1
- 更新日
- :2015年5月23日
- 文責
- :日本小児腎臓病学会