診断方法
臨床所見および画像検査によって腎静脈内に血栓を証明することによる。
- 臨床症状 発症経過から急性と慢性に区別され、急性型では突然始まる強い腰背部痛、肉眼的血尿などの臨床症状が認められる。急性型の頻度は少ないが、比較的若年に多くみられる。 慢性型では緩徐な血栓形成のため代償的に側副血行路が発達し、症状を欠くのが一般的である。下大静脈血栓症にまで進展すれば下肢の浮腫が起こりやすくなる。
- 検査所見 急性型では検尿で血尿、タンパク尿を認める。腎機能も一時的に低下する。超音波などの画像診断では血栓側に腫大した腎を認める。慢性型ではRVTそのものによる検査所見の異常はほとんどない。血尿の頻度も低く、腎の腫大もなく、腎機能の低下も認めないのが一般的である。
- 画像診断 従来は腎静脈造影法がgolden standardとされてきた。しかし、これは侵襲が大きいうえ、血栓の乖離による肺塞栓症などの合併症の危険を伴うことが知られ、最近では侵襲が比較的軽微で、解像力の高い画像診断が利用可能となっている。カラードプラーエコーは深部静脈血栓症に汎用されている。 腎臓は深部臓器であり、肥満者などで描出困難例もあるが熟練した技師であれば高率に描出可能であり、侵襲もなくRVTの診断に有用である1。
造影CTは腎機能障害のある場合には造影剤腎症に留意する必要があるが有用である。 最近はマルチスライスCTが普及しており、腎静脈を立体画像として観察することが可能であり、ごく短時間で撮影できることから、乳幼児にも有用である2,3。
MRIは解像度が良好であり、放射線被曝の問題がないという利点がある一方、時間がかかること、腎機能障害があるときにはガドリニウム造影剤は全身性線維症の危険があることからやや有用性に欠ける4。 慢性腎臓病(CKD)ステージ4、5ではMRAは避けるべきとされている。
参考文献
- Helenon O, et al:Renal vascular Dopplerimaging:clinical benefits of power mode. Radiographics 18:1441-1454, 1998.
- Phonsombat S, Stoller ML:Images in clinical medicine. Bilateral renal-vein thrombosis associated with the nephrotic syndrome. N Engl J Med 354:1402, 2006.
- Bashir R, et al: Renal vein thrombosis: a case report. Angiology 58:640-643, 2007.
- Jalandhara N, et al: Nephrogenic systemic fibrosis and gadrinium-containing radiological contrast agents:an update. Clin Pharmacol Ther 89: 920-923, 2011.
当該事業における対象基準
治療で薬物療法を行っている場合又は腎移植を行った場合
- 版
- :バージョン1.1
- 更新日
- :2015年5月23日
- 文責
- :日本小児腎臓病学会