診断の手引き

  1. 慢性腎疾患
  2. 大分類: 慢性糸球体腎炎
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フィブロネクチン腎症

ふぃぶろねくちんじんしょう

Glomerulopathy with fibronectin deposits, fibronectin nephropathy

告示

番号:40

疾病名:フィブロネクチン腎症

状態の程度

蛋白尿がみられる場合、腎機能低下がみられる場合又は腎移植を行った場合

診断基準

A 症状

蛋白尿、顕微鏡的血尿、高血圧等の腎炎症状または腎機能障害。


B 検査所見

蛋白尿、血尿、高血圧、腎機能障害など非特異的慢性腎炎症状に加えて、以下の病理学的または遺伝学的確定診断を行う。

腎病理組織所見
1.光学顕微鏡所見
 糸球体の腫大・分葉化が目立ち、メサンギウム領域および内皮下にPAS染色陽性の沈着物を認める。Congo red染色は全ての症例において陰性である。メサンギウム細胞の軽度増殖を認めることもある。糸球体の硬化病変も見られることがあるが、完全に硬化・虚脱している糸球体には沈着物を認めないとされている。尿細管間質には変化を認めないことが多い。

2. 免疫染色
 IgG, IgA, IgM, C3は通常陰性であるが、時に非特異的に弱陽性に染色されることがある。血漿性・細胞性FNに共通する抗体であるIST-4と細胞性FNのみに対する特異的抗体であるIST-9の2種類の抗FNモノクローナル抗体免疫染色を行い、IST-4のみ陽性であることにより病理学的に確定診断を行うことができる。

3. 電子顕微鏡所見
 メサンギウム領域、内皮下にPAS染色陽性部位と一致して多量の沈着物を認める。直径9~16nmの繊維状の構造物が見られる場合もある。


C 遺伝学的検査等

FN1遺伝子に病的変異を同定することにより遺伝学的に確定診断を行うことが可能である


D 鑑別診断

上記免疫染色における特殊染色や遺伝子診断を行わなかった場合、確定診断に至らず、腎病理学的にメサンギウム増殖性腎炎や膜性増殖性糸球体腎炎と診断されている例が存在する。


E-1 確実例

1. 血漿性・細胞性FNに共通する抗体であるIST-4と細胞性FNのみに対する特異的抗体であるIST-9の2種類の抗FNモノクローナル抗体免疫染色を行い、IST-4のみ陽性であることにより病理学的に確定診断を行うことができる。
2. FN1遺伝子に病的変異を同定することにより遺伝学的に確定診断を行うことが可能である
1と2の両方を行うことが推奨される。


E-2 疑い例

病理学的または遺伝学的な診断を実施できない場合、病理学的に他の特徴をすべて満たす場合が疑い例となる。

参考文献

1. Castelletti F, Donadelli R, Banterla F, Hildebrandt F, Zipfel PF, Bresin E, Otto E, Skerka C, Renieri A, Todeschini M, Caprioli J, Caruso RM, Artuso R, Remuzzi G, Noris M: Mutations in FN1 cause glomerulopathy with fibronectin deposits. Proc Natl Acad Sci U S A, 105: 2538-2543, 2008
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3. Strom EH, Banfi G, Krapf R, Abt AB, Mazzucco G, Monga G, Gloor F, Neuweiler J, Riess R, Stosiek P, et al.: Glomerulopathy associated with predominant fibronectin deposits: a newly recognized hereditary disease. Kidney Int, 48: 163-170, 1995
4. Yoshino M, Miura N, Ohnishi T, Suzuki K, Kitagawa W, Nishikawa K, Imai H: Clinicopathological analysis of glomerulopathy with fibronectin deposits (GFND): a case of sporadic, elderly-onset GFND with codeposition of IgA, C1q, and fibrinogen. Intern Med, 52: 1715-1720, 2013
:バージョン1.0
更新日
:2018年1月31日
文責
:日本小児腎臓病学会