診断方法
本症に特有の一般検査所見はなく、確定診断は腎組織検査による。
腎生検所見
- 光学顕微鏡所見
疾患の病期により異なるが、びまん性全節性の係蹄壁の肥厚を特徴とする。
PAM 染色では糸球体係蹄にスパイク形成を認めるが、初期では、微小変化の所見である。
また増殖性病変は通常認めない。 - 免疫蛍光抗体法所見
糸球体係蹄壁に沿って IgG や C3 の顆粒状の沈着をびまん性に認める。
修原病や感染症などによる続発性膜性腎症では、IgA、IgM、C1q、C4 などが沈着することがある。
とくに C1q の沈着は続発性(とくにループス腎炎)の可能性を示唆する所見である。
IgGサブクラスは、特発性膜性腎症では、IgG1 と IgG4 が沈着し、IgG4 優位であることが報告されている。 - 電子顕微鏡所見
糸球体基底膜の上皮下に高電子密度沈着物 (EDD) を認める。
疾患の進行とともに沈着物の性状と基底膜の肥厚の程度が変化し、4 つの病期に分類される(Ehrenreich-Churgの病期分類)。 - Stage 1
- 係蹄壁の上皮下に小さな散在性の EDD を認め、基底膜の肥厚はない。
- Stage 2
- EDD が上皮下に多数認められ、スパイク形成が認められる。また基底膜の肥厚を認める。
- Stage 3
- EDD は基底膜内に陥入する。基底膜は肥厚し、電子密度の低下した沈着物 (ELD) も出現する。
- Stage 4
- ELD や沈着物の遣残物が肥厚した基底膜内に認められる。経過とともに基底膜肥厚は軽快する。
組織学的分類と臨床症状は必ずしも一致しないことが知られている。
また特発性膜性腎症では、糸球体基底膜上皮下以外に沈着物を認めることはまれであり、メサンギウムや内皮下に沈着物を認める場合は、続発性膜性腎症を疑う。
当該事業における対象基準
病理診断で診断が確定し、治療で、ステロイド薬、免疫抑制薬、生物学的製剤、抗凝固薬、抗血小板薬、アルブミン製剤、降圧薬のうち一つ以上を用いる場合又は腎移植を行った場合
- 版
- :バージョン1.1
- 更新日
- :2015年5月23日
- 文責
- :日本小児腎臓病学会