診断方法
「大分類1:ネフローゼ症候群」の診断に準じ、診断基準 1. または2.を満たすもののうち、
ステロイド治療により 4 週間以内に蛋白尿が消失するものを微小変化型ネフローゼと診断する。
また、4 週間のステロイド治療により蛋白尿が消失しないステロイド抵抗例については、腎生検により診断する。
診断基準
- 国際小児腎臓病研究班 (International Study of Kidney Disease in Children :ISKDC) の診断基準に基づき、
高度蛋白尿(夜間蓄尿で40 mg/時/m2 以上または早朝尿で尿蛋白クレアチニン比 2.0 g/gCr 以上)、低アルブミン血症(血清アルブミン2.5g/dL以下)によりネフローゼ症候群と診断する。 - 以下の厚生省特定疾患調査研究班の診断基準を用いても良い
- ① 蛋白尿
- 1日の尿蛋白量は 3.5 g 以上ないし 0.1g/kg、または早朝起床時第 1 尿で 300 mg/100mL 以上の蛋白尿が持続する。
- ② 低蛋白血症
- 1)血清総蛋白量 ⇒ 学童・幼児: 6.0 g/100mL 以下、乳児:5.5 g/100mL 以下
2)血清アルブミン量 ⇒ 学童・幼児:3.0 g/100mL 以下、乳児:2.5 g/100mL 以下 - ③ 高脂血症
- 血清総コレステロール量 ⇒ 学童:250 mg/100mL 以上、幼児:220 mg/100mL 以上、乳児: 200 mg/100mL 以上
- ④ 浮腫
- *蛋白尿・低蛋白血症は本症侯群診断のための必須条件。
*高脂血症・浮腫は本症侯群診断のための必須条件ではないが、これを認めればその診断はより確実となる。
*蛋白尿の持続とは 3 ~ 5 日以上をいう。
MCNS診断上の留意点
本来MCNSの確定診断には病理組織学的検査が必要であるが、小児の特発性ネフローゼ症候群は組織学的には、MCNSが70~80%を占めていることが知られており、さらに、微小変化型の90%以上はステロイドによる治療に反応するステロイド感受性であるため、一般には腎生検は行わずにステロイド療法を先行させる。
腎生検の適応として、発症時に①持続的血尿肉眼的血尿、②高血圧、腎機能低下、③低補体血症、④1歳未満などがあげられ、このような臨床所見を認める場合には微小変化型以外の組織型の可能性が考えられ、腎生検で組織型を確定したあとに治療方針を決定する。
鑑別診断
病理組織学的な鑑別疾患として巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)が重要である。
FSGS の病初期には、病変は皮髄境界付近のごく一部の糸球体にのみ病変を認められるため、
腎生検標本内に FSGS 病変を見いだすことができず、組織学的には微小変化と診断される場合がある。
このように微小変化型と FSGS との鑑別が不可能な場合もあることに留意する必要がある。
当該事業における対象基準
次のいずれかに該当する場合
①「半年間で3回以上再発」した場合、または「1年間に4回以上再発」した場合
② 治療で免疫抑制薬又は生物学的製剤を用いる場合
③ 腎移植を行った場合
- 註1.
- 「半年以内に3回以上の再発を認めた場合又は1年以内に4回以上再発」した場合に医療費助成の対象となるが、その場合であっても「半年間で3回以上再発」した場合における1回目及び2回目の再発、及び、「1年間に4回以上再発」した場合における3回目までの再発の治療に要した費用は医療費助成の対象とはならない
- 註2.
- 「微小変化型ネフローゼ症候群」には一部のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を含む
- 版
- :バージョン1.1
- 更新日
- :2015年5月23日
- 文責
- :日本小児腎臓病学会