診断方法
主症状
発生部位に応じた症状を呈するが、多くは腫瘤触知やその圧迫症状、または腫瘍破裂による症状などである。具体的には腹部腫瘤や膨隆、精巣腫大、仙尾部腫瘤、腹痛、疝痛、縦隔腫瘤の場合は気道圧迫症状、卵巣腫瘍の場合は茎捻転による症状もある。
検査所見
- 1. 画像診断 特異的な所見はないが、単一の組織型であれば均質な充実性腫瘍の像を呈することが多い。遠隔転移をきたすこともある。
- 2. 血清AFP値 上昇する症例が多い
- 3. 肉眼所見 表面は平滑な皮膜で覆われており、充実性で軟らかく、光沢を有する。最大径は10cmを超えることが多い。周辺臓器への癒着・浸潤が見られることもある。割面は黄白色で軟らかく、大小の嚢胞や軟化融解を認め、粘性の内容液を含んでいる。通常は片側性である。多くは年齢と肉眼所見から診断可能であるが、奇形腫や未分化胚細胞腫の成分を有すると多彩な像を示す。
- 4. 病理組織所見 卵巣腫瘍取り扱い規約では内胚葉洞型、多嚢性卵黄型、類肝細胞型、腺型の4組織型に大別してあるが、互いに混在・移行することが多い。
- ①
- 内胚葉洞型endodermal sinus pattern:ラットの胎盤(卵黄嚢)を模倣する腫瘍で、立方形ないし扁平な細胞が網目状reticular pattern、乳頭状あるいは充実性配列を示す。ときに腫瘍細胞が血管周囲に配列を示すSchillar-Duval小体を形成する。花網festoon pattern、迷路模様labyrinthine sinusもみる。通常、腫瘍細胞はグリコーゲンや脂肪に富み明るい。細胞内外の硝子様小球hyaline globuleも存在する。最も高頻度に認められる組織像で、ほとんどの卵黄嚢腫瘍に存在する。
- ②
- 多嚢性卵黄型polyvesicular vitelline pattern:ヒト初期胚の二次卵黄嚢に類似した多数の嚢胞からなる。嚢胞は1層の中皮様細胞により裏打ちされ、その胞体は淡明である。扁平な腫瘍細胞はしばしば立方状の細胞に移行し、その部が嚢胞からくびれて内胚葉性の腺管をつくる。卵黄嚢腫瘍の24%に認められる。
- ③
- 類肝細胞型hepatoid pattern:肝細胞あるいは肝細胞癌に類似する好酸性の腫瘍細胞が充実性胞巣状、管状、索状に配列する。二次卵黄嚢が肝へ分化した像と考えられる。卵黄嚢腫瘍の30%に認められる。
- ④
- 腺型glandular pattern:立方形の腫瘍細胞が管状あるいは原腸状配列を示す。胞体は一般に淡明である。その腺管は未熟なものから分化したものまでさまざまで、enteric-like changes、intestinal differentiation、endometrioid-like patternなどの名称で呼ばれている。卵黄嚢腫瘍の29%に認められる。
診断
原則として、病理組織学的検査により診断する。
参考文献
- 卵巣腫瘍病理アトラス, 文光堂 2010 日本産婦人科学会, 日本病理学会編:卵巣腫瘍取り扱い規約 第1部-組織分類ならびにカラーアトラス. 金原出版, 1990
- Tavassoli, F. A., Devilee, P. :Pathology and Genetics of Tumours of the Breast and Female Genital Organs. World Health Organization Classification of Tumours, IARC Press, Lyon 2003
- 滝 一郎, 上田外幸, 辻本正彦 : 診療のための婦人科腫瘍の臨床病理. メジカルビュー社, 1992
- Sasaki, H., Furusato, M., Teshima, S., et al. : Prognostic significance of histopathologic subtypes in stage I pure yolk sac tumor of ovary. Br J Cancer 1994, 69 : 529-536
- 新小児がんの診断と治療 別所文雄他 診断と治療社
当該事業における対象基準
組織と部位が明確に診断されている場合。治療終了後から5年を経過した場合は対象としないが、再発等が認められた場合は、再度対象とする。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会