診断の手引き

  1. 悪性新生物
  2. 大分類: 固形腫瘍(中枢神経系腫瘍を除く。)
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胎児性癌

たいじせいがん

Embryonal carcinoma

告示

番号:28

疾病名:胎児性癌

診断方法

I. 主症状

発生部位に応じた症状を呈するが、多くは腫瘤触知やその圧迫症状、または腫瘍破裂による症状などである。具体的には腹部腫瘤や膨隆、精巣腫大、仙尾部腫瘤、腹痛、疝痛、縦隔腫瘤の場合は気道圧迫症状、卵巣腫瘍の場合は茎捻転による症状もある。

II. 検査所見

  1. 画像診断では、特異的な所見はないが、単一の組織型であれば均質な充実性腫瘍の像を呈することが多い。遠隔転移をきたすこともある。
  2. 血清β-hCG値が上昇するものが多い
  3. 肉眼および病理組織学所見
  4. 混在する胚細胞腫瘍の成分によって肉眼像は異なるが、純粋型は片側性、表面は平滑な比較的軟らかい腫瘤で、割面は灰白淡黄褐色、出血・壊死を伴うことが多く、嚢胞や空洞もみる。組織学的には胎児期の未熟な上皮様の異型細胞からなり、乳頭状あるいは管状構造をなし、ところによっては充実性の増生を示す。個々の腫瘍細胞は大型高円柱状、細胞境界は不明瞭、核は長楕円形、核小体は明瞭である。核分裂は多い。免疫組織化学的にCD30が陽性、α-フェトプロテイン(AFP)が一部の腫瘍細胞に陽性を示す。多核の合胞体栄養膜細胞syncytiotrophoblast様の腫瘍細胞がしばしば認められ、ヒト絨毛性ゴナドトトピン(hCG)陽性となる。

III. その他の徴候

診断

原則として、病理組織学的検査により診断する。

参考文献

  1. 卵巣腫瘍病理アトラス, 文光堂 2010
  2. 新訂版 小児腫瘍組織分類図譜 第5編, 金原出版 1999
  3. 新小児がんの診断と治療 別所文雄他 診断と治療社

当該事業における対象基準

組織と部位が明確に診断されている場合。治療終了後から5年を経過した場合は対象としないが、再発等が認められた場合は、再度対象とする。

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児血液・がん学会