診断方法
主症状
白色瞳孔(69.3%)、斜視13.3%)、結膜充血(4.8%)、低視力(2.3%)、角膜異常(1.9%)、眼瞼腫脹(1.3%)、眼球突出(0.5%)を認める。(頻度は、網膜芽細胞腫全国登録1975-1982 による)
検査所見
1)眼底検査
眼底検査では、透明組織を通して、腫瘍を直視下に拡大して観察することが可能である。典型的な石灰化を伴う隆起性病変を認める場合、臨床的診断によって診断してよい。治療方針を決定するには、病期診断のために詳細に眼底検査する必要があり、これは網膜芽細胞腫治療を専門とする眼科医師によって行われるのが望ましい。硝子体混濁等により、腫瘍が観察できない状態にある場合には、超音波検査、CT検査などの画像検査、あるいは生検を考慮する。
2)生検と病理学的診断
眼球温存治療を行う場合には、十分な検体の採取が困難である。生検は、眼球温存治療を行う場合には、眼内組織の採取により、視機能に対する重篤な合併症を生じる可能性があり、さらに、術後転移の危険性を高くすることがあるため、原則行わない。眼底検査、画像診断からも確定診断がえられない場合には、上記の危険性を十分に考慮した上で針生検を行う場合がある。腫瘍の進展から、眼球摘出が行われる場合には、摘出後病理学的検査を行い、強膜浸潤、視神経への浸潤、脈絡膜への浸潤など組織学的所見に基づいて後療法の必要性を判断する。
3)画像検査
眼底検査において、硝子体への播種、混濁などにより腫瘍を透見できない場合、超音波検査、CT検査によって石灰化を伴う腫瘍を描出できる場合には診断的である。眼球温存治療を行う場合、眼球外進展が疑われる場合には、画像検査によって腫瘍の進展や、頭蓋内病変の有無を評価する。評価のためにはMRI検査がもっとも有用である。治療開始までの時間が長くなると、腫瘍進展や転移の可能性もあるため、これらの治療前の評価は治療を担当する施設において行われるのが望ましい。
4)血液検査
腫瘍に特異的な血液検査所見はない。Neuron specific enolase(NSE)の上昇を認める。
5)髄液検査と骨髄検査
眼底検査や画像検査から眼球外進展や転移が疑われる場合を除き、検査は必要ない。
III.病期分類
- 第1に、眼球内腫瘍であるか、眼球外進展があるかの評価が重要である。眼底所見と、必要に応じて行われる画像所見で判断される。
- 眼球内腫瘍の場合には、病期分類として、古典的なReeseーEllsworth分類(表1)がある。眼球温存治療においてこれは放射線治療が標準的な初期治療であった時代の分類で、近年は国際病期分類(表2)が提唱され、有用であるとされる。論文では両者が併記される場合もある。これらはいずれも、眼底所見に基づく分類であり、専門家によって診断されるべきものである。
- 眼球摘出された場合には、摘出眼球の病理学的所見から、リスク評価し、後療法の必要性と内容を検討する。リスク評価についは国際的にもまだ議論が多い。
- 眼球外進展例、遠隔転移例については、その進展度に従い治療方針を定める。
IV.その他の特徴
- 眼球内腫瘍の段階で診断し、治療を開始するのが生命予後からは重要であり、疾患が疑われた場合には、その後の治療の可能な施設での診断・検査が望ましい。
- 腫瘍の進展度から病期を評価し、視機能回復の可能性も考慮し温存治療が可能かどうかを判断する。
参考文献
- C Rodriguez-Galindo & MW Wilson:Retinoblastoma, Springer 2010
- 鈴木茂伸:5章 網膜芽細胞腫 pp161-202 in 小児がん診療ガイドライン 金原出版 2011
当該事業における対象基準
組織と部位が明確に診断されている場合。治療終了後から5年を経過した場合は対象としないが、再発等が認められた場合は、再度対象とする。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月6日
- 文責
- :日本小児血液・がん学会