診断の手引き

  1. 悪性新生物
  2. 大分類: 組織球症
26

24及び25に掲げるもののほか、組織球症

そのた、そしききゅうしょう

Other histiocytosis

告示

番号:47

疾病名:45及び46に掲げるもののほか、組織球症

診断方法

いずれの診断も、生検組織の病理診断により行う。

濾胞樹状細胞肉腫(Follicular dendritic cell sarcoma)

濾胞樹状細胞の特徴を示す紡錘形あるいは卵形細胞のまれな腫瘍性増殖症。幅広い年齢層でみられる。ゆっくり増大する無痛性の腫瘤を呈する。2/3の例はリンパ節病変で、頸部に最も多いが腋窩、縦隔、腸間膜および後腹膜リンパ節に発生することがある。通常、進行は遅く、治療は外科的切除である。1/2の例が局所再発し、1/4の例に転移が見られる。CD1a陰性、Langerin 陰性または陽性、S100陰性、CD21, CD23, CD35, Desmoplakin陽性。

指状嵌入樹状細胞肉腫(Interdigitating dendritic cell sarcoma)

指状陥入細網細胞の特徴を示す紡錘形あるいは卵形細胞のまれな腫瘍性増殖症。多くはリンパ節の孤発病変であるが、皮膚や節外病変を呈することもある。通常は無症候性の腫瘤を主訴とする。予後は一般に良好で、腫瘤切除により治癒することが多い。CD1a, Langerin陰性、S100陽性。

ランゲルハンス細胞肉腫(Langerhans cell sarcoma)

ランゲルハンス細胞の極めてまれな腫瘍性増殖症。幅広い年齢層でみられる。リンパ節、肝臓、脾臓、肺および骨など多臓器に浸潤する。予後は悪く粗生存率は50%。明らかな悪性の組織学的特徴を示し、CD1a,Langerin, S100陽性。Ki67陽性率 10-60%。

若年性黄色肉芽腫(Juvenile xanthogranuloma)

皮膚樹状細胞由来と考えられる組織球の増殖症。黄褐色の多発性結節性小丘疹のみの皮膚型が75%、軟部組織腫瘤型が15%、実質臓器(皮下・頭蓋内・肝/脾・肺・眼/眼窩・骨など)に腫瘤を形成する全身型が10%を占める。主に乳幼児にみられ、全身型のほとんどは6か月未満の乳児で胎児期発症である。皮膚型の多くは自然消退するが、全身型で肝不全を呈する例や頭蓋内腫瘤のある例は生命予後不良。浸潤した組織球はCD1a, Langerin, S100陰性、FXIIIa陽性。皮膚型にはTouton巨細胞が見られることが多いが全身型ではみられないこともある。

エルドハイム・チェスター病(Erdheim-Chester disease)

主に中年以降に多く小児ではまれ。両側対称性で長管骨の病変を特徴とし、膝や足関節痛、体重減少や発熱を主症状とする。半数以上の例は、腎や後腹膜、皮膚、中枢神経、肺、眼窩などの骨外病変を有し、後腹膜線維症に伴う尿管狭窄、黄色腫、小脳失調、尿崩症、肺線維症に伴う呼吸器症状、眼球突出などを呈する。LCHと異なり、骨病変は硬化性で、リンパ節や肝/脾・脊椎への浸潤はまれ。長期の経過をたどり予後は不良で、肺線維症による呼吸不全や心不全、尿管閉塞による腎不全で死亡することが多い。組織型はJuvenile xanthogranulomaに類似し、浸潤した組織球はCD1a, Langerin, S100陰性、FXIIIa陽性。Touton巨細胞が見られる。

ロサイ・ドルフマン病(Rosai-Dorfman disease)

小児から若年成人に多い。無痛性の両側性頸部リンパ節腫脹が主症状で、ときに巨大腫瘤となる。腋窩や傍大動脈・縦隔・そ径リンパ節腫脹をみることもある。発熱や体重減少、好中球優位の白血球増多、高γグロブリン血症をきたす。膨隆疹や溶骨性病変、眼窩腫瘤などの節外病変を半数近くに伴う。疾患の活動期に自己免疫性溶血性貧血や糸球体腎炎、関節リウマチなどの自己免疫疾患を合併することがある。リンパ節病変のみの例は速やかに寛解し再燃は少ないが、節外病変を伴う例は多発性のリンパ節病変が多く寛解増悪を繰り返し経過は年余にわたる。腎・肺・肝病変を伴う例の予後は不良で、死亡率は5-10%。リンパ節の構築は破壊され、リンパ節洞は組織球(CD1a陰性、S100陽性)とリンパ球や形質細胞で埋め尽くされ、組織球への赤血球やリンパ球・形質細胞の細胞内貫入(emperipolesis)が特徴。

参考文献

  1. Jaffe R, Weiss LM, Facchetti F. Tumours derived from Langerhans cells. In: Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, Jaffe ES, Pileri SA, Stein H, Thiele J, Vardiman JW, editors. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon: IARC Press; 2008. pp. 358–360.
  2. Histiocyte Society. Juvenile xanthogranuloma. http://www.histiocytesociety.org/document.doc?id=48
  3. Histiocyte Society. Erdheim-Chester disease. http://www.histiocytesociety.org/document.doc?id=46
  4. Histiocyte Society. Rosai-Dorfman disease. http://www.histiocytesociety.org/document.doc?id=54

当該事業における対象基準

組織と部位が明確に診断されている場合。治療終了後から5年を経過した場合は対象としないが、再発等が認められた場合は、再度対象とする。

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児血液・がん学会