診断の手引き

  1. 悪性新生物
  2. 大分類: 組織球症
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血球貪食性リンパ組織球症

けっきゅうどんしょくせいりんぱそしききゅうしょう

Hemophagocytic lymphohistiocytosis

告示

番号:45

疾病名:血球貪食性リンパ組織球症

診断方法

国際組織球委員会による国際治療研究 HLH-2004による診断基準は下記である。

項目AまたはBを満たすものを血球貪食性リンパ組織球症と診断する。

  1. 血球貪食性リンパ組織球症の原因となる遺伝子異常を有する
  2. 血球貪食性リンパ組織球症の臨床診断基準を満たす(8つの所見のうち5つ)

臨床所見

  1. 発熱
  2. 脾腫

検査所見

  1. 血球減少(末梢血の3系統のうち少なくとも2系統に異常があること)
    Hemoglobin<9.0g/dL、Platelets<100,000/μL、Neutrophils<1000/μL
  2. 高トリグリセライド血症(>265 mg/dL)または低フィブリノゲン血症(<150mg/dL)

組織学的所見

  1. 骨髄、脾臓、またはリンパ節の血球貪食像を認める、悪性所見なし

検査データ所見

  1. NK細胞活性定値または欠損(正常範囲はそれぞれの検査基準に従う)
  2. 血清フェリチン値>500ng/mL
  3. 血清Soluble CD25(Soluble IL-2 receptor)値>2,400U/mL

付記

  1. 診断基準には含まれないが診断に有用な所見
    1. 髄液の細胞増多(単核球)および/または髄液蛋白増加
    2. 肝で慢性持続性肝炎に類似した組織像(生検にて)
  2. 診断を示唆する他の所見
    • 髄膜刺激症状、リンパ節腫大、黄疸、浮腫、皮疹、肝酵素上昇、低蛋白血症、低ナトリウム血症、VLDL値上昇、HDL値低下
註1.
PRF1MUNC13-4STX11 の遺伝子異常の確定には日時を要するので、実際上はperforinフローサイトメトリーあるいはMUNC13-4、syntaxin 11 蛋白発現解析で異常がみられれば遺伝子異常ありとみなしてよい。一方上記診断を満たし、NK 活性正常かつ EBV 量が単核球中≧10,000 コピー/μg DNA 以上であれば二次性(EBV-HLH)の可能性が高い。
註2.
症例によっては発症時にHLH-2004 診断ガイドラインの基準をすべて満たすわけではなく、経過と共に基準のいくつかを満たすことが少なくない。したがって診断基準を満たさない場合は注意深くフォローし、基準を満たした(同時期に症状・所見が揃った)時点で血球貪食性リンパ組織球症の診断をおこなう。
註3.
原発性の発症は通常乳児期であるが、思春期や若年成人でも報告されている。二次性はすべての年齢で見られる。

参考文献

  1. Henter, J. I, Horne A, Aricó M, et al. HLH-2004: Diagnostic and therapeutic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis. Pediatr Blood Cancer 48: 124-131, 2007
  2. Henter J-I, Elinder G, Öst Å, and the FHL Study Group of the Histiocyte Society. Diagnostic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis. Semin Oncol 18: 29-33, 1991
  3. Henter J-I, Arico M, Elinder G, Imashuku S, Janka G. Familial hemophagocytic lymphohistiocytosis (primary HLH). Hematol Oncol Clin North Am 12:417-33, 1998.

当該事業における対象基準

組織と部位が明確に診断されている場合。治療終了後から5年を経過した場合は対象としないが、再発等が認められた場合は、再度対象とする。

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月6日
文責
:日本小児血液・がん学会