疾患概念
疫学
病因
病理・病態
臨床症状
食道の閉鎖により、出生直後から口腔や鼻腔より唾液が泡沫状に流出する。哺乳は不能で、哺乳した場合は嚥下不可能なためすぐに吐き出す。唾液の誤嚥や気管食道瘻を介した胃液の気管内逆流により、肺炎・呼吸不全を呈する。
食道の閉鎖を伴なわないGross分類E型では、哺乳時のむせ込みや繰り返す肺炎などを契機に発見される。
検査所見
X線不透過性のカテーテルを鼻腔または口腔から食道内に挿入しX線撮影をすると食道盲端でカテーテルが反転する像(coil-up sign)が描出される。胃泡・消化管ガスの有無により、下部食道の気管食道瘻の有無が鑑別できる。
心疾患、直腸肛門、腎・尿路、椎体などの合併疾患が多く、それぞれに応じた精査が必要である。
診断
診断の際の留意点/鑑別診断
食道の閉鎖部位や気管食道瘻の存在確認のために、一部の施設で食道造影やCT検査などが実施されることもあるが、誤嚥・呼吸状態の悪化のリスクがあるため実施されないことも多く、これらの検査の適応には慎重な判断が必要である。
食道の閉鎖を伴わないGross分類E型が疑われた場合には、上部消化管造影、上部消化管内視鏡、気管支ファイバーなどで気管食道瘻の存在を証明する。
合併症
術前の合併症としては、肺炎・呼吸不全や合併する心疾患・染色体異常に伴うものがある。
周術期の合併症には、無気肺・肺炎・気胸などの肺合併症、縫合不全、気管軟化症などがある。
長期合併症としては、吻合部狭窄、気管食道瘻の再開通、胃食道逆流症、気管支軟化症、胸郭変形、経口摂取困難などがある。
治療
根治的治療として、食道閉鎖症根治術(気管食道瘻閉鎖・食道食道吻合)が実施される。近年では胸腔鏡手術を行う施設もある。術前の誤嚥の回避、麻酔管理の安定化のために胃瘻造設が先行されることもある。
心疾患や低出生体重児、long gap例などのハイリスク例では胃瘻造設術、気管食道瘻閉鎖※/腹部食道バンディング術※などの姑息術を施行後に、成長を待って根治術が実施されることもある。Long gap例では、種々の*食道延長術が実施される。
※ 令和6年7月現在、診療報酬点数表収載の術式ではない。
予後
患者会
研究班
成人期以降の注意点
参考文献
- 先天性食道閉鎖症 標準小児外科学 第8版(2022年) 医学書院 p147-151
- Congenital Anomalies of the Esophagus, Pediatric Surgery, 7th ed (2012). Elsevier, p893-918
- 臼井 規朗ら わが国の新生児外科の現状 2018年新生児外科全国集計 日小外会誌 56巻7号 Page1167-1182, 2020
- 版
- :第1版
- 更新日
- :2025年4月1日
- 文責
- :日本小児外科学会