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先天性ポルフィリン症

せんてんせいぽるふぃりんしょう

Porphyria

告示

番号:11

疾病名:先天性ポルフィリン症

疾患概念

先天的なヘム合成系に関わる8つの酵素のいずれかの活性異常による先天代謝異常であり、いずれの酵素活性異常が関与するかによって、9つの病型に分類される(表1)。

光線過敏を主症状とする皮膚型と、急性症状を主体とする急性型に大別される。皮膚型ポルフィリン症として先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)、赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)、X連鎖赤芽球性プロトポルフィリン症(XLPP)、晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)、肝赤芽球ポルフィリン症(HEP)があり、急性型ポルフィリン症として急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、ALA脱水酵素欠損症ポルフィリン症(ADP)、多様性ポルフィリン症(VP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)がある。

遺伝形式は、CEP、ADP、HEP は常染色体劣性遺伝で、XLPPはX染色体連鎖、そのほかの病型は常染色体優性遺伝である。

表1. 先天性ポルフィリン症の病型
分類 病型 原因遺伝子産物 遺伝形式
皮膚型先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)ウロポルフィリノーゲン合成酵素(UROS)常劣
赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)フェロケラターゼ(FECH)常優
X連鎖赤芽球性プロトポルフィリン症(XLPP)δアミノレブリン酸合成酵素2(ALAS2)X連
晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素(UROD)常優
肝性赤芽球性ポルフィリン症(HEP)ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素(UROD)常劣
急性型急性間欠性ポルフィリン症(AIP)ヒドロキシメチルビン合成酵素(HMBS)常優
δアミノレブリン酸脱水酵素欠損性ポルフィリン症(ADP)δアミノレブリン酸脱水酵素(ALAD)常劣
多様性ポルフィリン症(VP)プロトポルフィリノーゲン酸化酵素(PPOX)常優
遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)コプロポルフィリノーゲン酸化酵素(CPOX)常優
常劣:常染色体劣性遺伝、常優:常染色体優性遺伝、X連:X染色体連鎖性遺伝

疫学

小児における発症頻度は不明。まれな疾患である。

病因

遺伝子変異によって生じるヘム合成酵素の活性異常が原因である。

臨床症状

先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)、赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)、晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)は、幼児期から小児期に光線過敏症状を呈する。ALA脱水酵素欠損症ポルフィリン症(ADP)、急性間歇性ポルフィリン症(AIP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、多様性ポルフィリン症(VP)では、急性症状として腹痛、嘔吐などの消化器症状、けいれん、末梢神経障害、うつ症状などの精神神経症状および高血圧などの諸症状が急性から亜急性に生じてくる。ただし、ADP以外の急性型は小児では比較的まれである。

診断

『診断の手引き』を参照

治療

遮光対策として日焼け止めの外用や紫外線をカットする衣服を装着する。貧血に対しては、鉄剤は使用しない。輸血は安全とされている。

予後

日光遮断対策が必須である。EPPについては肝障害の予防が生命予後に関係する。

成人期以降の注意点

EPPでは肝疾患の進行に注意を払い、肝不全例では肝移植を行う。

参考文献

  1. 堀江 裕、先天性ポルフィリン症 遠藤文夫(編)先天代謝異常ハンドブック第1版、中山書店 2013 272-273
:改訂第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児皮膚科学会