1. 神経・筋疾患
  2. 大分類: 難治てんかん脳症
74

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん

みおくろにーだつりょくほっさをともなうてんかん

Epilepsy with myoclonic-atonic seizures

告示

番号:75

疾病名:ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん

疾患概念

乳幼児期に発症する小型運動発作(ミオクロニー発作、失立発作、脱力発作など)を伴うてんかん群は、その特異な発作型や治療抵抗性で世界的に早くから注目されてきた。中でも1歳以上になってから発症するものとしてレノックス・ガストー症候群(Lennox-Gastaut症候群)が、全般性遅棘徐波と強直発作、非定型欠神発作などの多彩な発作型を持つ独立したてんかん症候群として確立されたが、その後、Dooseらは正常発達幼児で、遺伝性素因を背景としミオクロニー脱力発作を主徴とする「ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん」を提唱した。レノックス・ガストー症候群、乳児重症ミオクロニーてんかん(ドラベ症候群〔Dravet症候群〕)や乳児ミオクロニーてんかんとの異同が問題となった時期もあるが、1989年国際てんかん症候群分類より独立したてんかん症候群として認知された。

疫学

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんは稀なてんかんで、岡山県における小児てんかんの疫学調査から13歳以下の全小児てんかんの0.08%を占め、本邦では100人程度の患者がいると推測されている。

病因

痙攣性疾患の家族歴が高頻度であり、遺伝性疾患が想定されているが、まだ不明である。

臨床症状

てんかん発症前の発達は正常、5歳未満の発症(2~5歳が最も多い。)で、てんかん発作型は主発作型として①ミオクロニー屈曲発作、②ミオクロニー脱力発作/脱力発作によるてんかん性転倒発作が最も重要で必須である。

①ミオクロニー屈曲発作では、一瞬の躯幹の前方屈曲、特に腰のところで屈曲し、勢いよく前方に放り投げられるように転倒し、②ミオクロニー脱力あるいは脱力発作では、文字通り、全身あるいは立位を維持する姿勢制御筋の突然の脱力により、患者が転倒する。しかし、意識障害はなく、すぐに回復し立ち上る。その他に③非定型欠神発作(重積)、全般強直間代発作を合併する。睡眠時の全般強直発作は、一部の予後不良例に合併することが多い。脳波所見では焦点性脳波発射は希で、全般性2~3 Hz棘徐波と背景脳波に頭頂部優位単律動6~7 Hzθ波の存在が特徴とされる。

診断

主要臨床症状として、1. 発症までの発達が正常、2. 2~5歳発症のミオクロニー脱力発作、3.全般強直間代発作、非定型欠神発作の合併、4.20~50%で経過中に強直発作を合併、が特徴である。また、他の重要な臨床所見および検査所見として、1. 脳波:焦点性脳波発射は希で、全般性2~3 Hz棘徐波と背景脳波に頭頂部優位単律動6~7 Hzθ波の存在が特徴、2. MRI:正常、が特徴である。主要臨床症状の1、2と他の重要な臨床所見および検査所見の1を満たすとき、本症と診断する。

診断の際の留意点/鑑別診断

乳児ミオクロニーてんかん、中心・側頭部棘波を示す非定型小児てんかん、レノックス・ガストー症候群などが鑑別疾患となる。

治療

抗てんかん薬治療に抵抗性とされるが、バルプロ酸、エトスクシミド、ラモトリギンなどで効果が期待される。これらが無効の場合ACTH治療、ケトン食治療の有効性が高い。

予後

50~80%の症例で発作は軽快する。知的予後は中等度遅滞から正常まで様々であるが、臨床経過が短時間であるほど良好である。

成人期以降の注意点

一部の症例では、成人期以降もてんかん、知的障害が残存する。成人期に認める発作型・病型や障害に応じた治療・ケアを行う。

参考文献

    日本てんかん学会、編:てんかん専門医ガイドブック 改訂第2版、診断と治療社、2020
:第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児神経学会