概要
病因
本疾患は、X連鎖型をとるNEMO遺伝子異常症と常染色体優性遺伝のIκBα遺伝子異常がある。いずれもNF-κB活性化が障害されているため、各種の受容体からのシグナル伝達が障害される。外胚葉の発生に重要なEctodysplasin A receptorからのシグナル伝達障害によって外胚葉形成不全がおこり、TNF-α receptor、IL-1 receptor、Toll-like receptor等からのシグナル伝達障害は自然免疫不全の原因となり、T cell receptorやCD40からのシグナル伝達障害によって細胞性免疫不全や液性免疫不全を呈すると考えられる
疫学
国内に20名程度の患者が同定されている
臨床症状
1. 外胚葉形成不全(77%) 歯牙欠損/萌出不全・円錐状歯、発汗低下や無汗症、粗な頭髪や眉毛 2. 易感染性(98%) 細菌感染症(86%)、抗酸菌感染症(44%)、敗血症/菌血症(33%)、肺炎(31%)、膿瘍(30%)、DNAウイルス感染症(21%)、髄膜炎(21%)、ニューモシスティス肺炎(8%)。 3. 大理石病(8%) 4. リンパ浮腫(8%) 免疫学的検査では、 NK活性低下(100%)、低ガンマグロブリン血症(59%)、高IgA血症(37%)、高IgM血症(15%)、高IgD血症(40%)、特異抗体産生不全(64%)等が認められる
治療
早期発見によるBCG接種の回避。 感染症に対する予防投薬(ST合剤等)。 低ガンマグロブリン血症に対するガンマグロブリン補充療法。 感染症発症時の速やかな抗菌剤の投与。 炎症性腸疾患に対しては、サラゾスルファピリジン、メサラジン、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤の投与。難治性の場合は抗ヒトTNF-α抗体による治療を考慮する。 造血幹細胞移植の有効性は示されてない
合併症
(1)炎症性腸疾患 (2)腸管の形成異常による腸管狭窄や短腸症候群 (3)自己免疫疾患・リウマチ性疾患 (4)溶血性尿毒症症候群 (5)血球貪食症候群
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本免疫不全症研究会