概要
BCGや非定型抗酸菌など弱毒抗酸菌に対して選択的に易感染性を示し、結核菌やサルモネラなどの細胞内寄生菌に対して重篤な感染症をきたす。このため、他の細菌や真菌、ウイルスなどに対しては易感染性を示さない。治療は抗生剤(抗結核約)等の内科的治療が主体となる。
病因
細胞内寄生菌に対する生体の防御機構は主にIL-12/23_IFNγ経路であり、この経路に関わる分子異常により本疾患は発症する。以下のこれまで報告された原因分子を示す。
・ IL-12 p40
・ IL-12受容体β1(IL-12Rβ1)
・ IFNγ受容体1(IFNγR1)
・ IFNγ受容体2(IFNγR2
・ signal transducers and activator of transcription (Stat-1)
・ NF-κB essential modulator (NEMO)
・ 一部のgp91phox
・ tyrosine kinase 2(Tyk 2)
・ interferon regulatory factor 8(Irf 8)
・ interferon-stimulated gene 15 protein(Isg15)
疫学
非常にまれな疾患で、その詳細な頻度は不明である。各病型の頻度はIL-12受容体β1異常症とIFNγ受容体1が最も多く、それぞれ約40%を占める。また、IL-12 p40は約10%で、Stat-1、IFNγ受容体2、NEMOはそれぞれ数%である。Gp91phox、Tyk 2、Irf 8、Isg15に関しては数例の報告があるのみである。
臨床症状
IL-12/23_IFNγ経路の異常による易感染性は、病型ごとで異なる。IFNγR1とIFNγR2の完全欠損では、本経路のシグナルが完全に障害されるため、抗酸菌感染に対する防御機構が著しく障害され、致死的な抗酸菌感染症をきたす。多くの感染症は乳幼児期におこり、抗生剤に抵抗性を示すか再燃を繰り返す難治性の経過をとる。一方、IFNγR1、IFNγR2、Stat-1の部分欠損症では、残存するIFNγのシグナルにより、感染症治療に対する反応は比較的よい。また、L-12 p40、IL-12Rβ1の完全欠損では、IL-12非依存性のIFNγ分泌により、抗菌治療への反応は良好で致死的感染にはなることは稀である
治療
同定した病原体に感受性のある抗酸菌薬を選択し、速やかに治療を開始する。BCG未接種者では、非定型抗酸菌感染症あるいは結核を考慮する。長期にわたる抗抗酸菌治療が必要で、局所的な難治性感染症では外科的切除を要する場合もある。IL-12β、IL-12Rβ1、IFNγR1およびIFNγR2部分欠損では抗抗酸菌治療が有効だが、難治例ではIFNγ皮下注射の併用が有効である
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本免疫不全症研究会