概要
末梢血好中球絶対数が500/μL以下が2~3か月持続し、臨床的に易感染性を呈する疾患で、多くは乳児期後半から幼児期に発症する。血清中の抗好中球抗体は陽性であるが、検査法の感度によっては陰性の場合もある。ほとんどの症例で、抗好中球抗体の自然消失に伴い、好中球減少は軽快する良好な臨床経過をとる。
病因
好中球表面分子に対する自己抗体産生により、好中球の破壊亢進が認められ好中球減少となる。成熟好中球が発現している好中球特異抗原に対する抗体がほとんどであることから、骨髄像では桿状核好中球までは存在するが、分葉核好中球が著減する。
疫学
乳幼児期の自己免疫性好中球減少症は自然治癒する良好な自然経過をとることから、正確な発症頻度を算定することは不可能である。少なくとも慢性好中球減少が指摘され、詳細な検査が行われた症例の約70%に自己抗体が検出されている。
臨床症状
好中球減少に伴う易感染性を認め、上気道炎や中耳炎などの細菌感染症を反復する。約80%の症例で上気道炎、中耳炎や膿痂疹などの感染症を併発するが軽症のことが多い。しかし、入院治療を必要とする肺炎や敗血症などの重症感染症を合併する場合がある。
治療
重症感染症の合併頻度は低く、通常は感染症時の適切な抗生剤投与を行う。頻回に中耳炎などの細菌感染症を合併する場合にはST合剤などの投与が有効である。重症難治性感染症に対してはG-CSF投与が併用される。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2015年6月15日
- 文責
- :日本免疫不全症研究会
概要
重症先天性好中球減少症(SCN)や周期性好中球減少症(CN)以外に、慢性的な経過をとる好中球減少症の原因遺伝子が明らかになっている。2014年のIUIS免疫不全症分類ではSCN、CN以外に6疾患が示されている。
病因、臨床症状、合併症
(1) 糖原病1b型: グルコース6リン酸トランスカロラーゼ(G6PT1)の異常によりグリコーゲンが蓄積し、好中球減少を発症する代謝性疾患である。低血糖、乳酸アシドーシス、低血糖とともに好中球減少症を来す。常染色体劣性遺伝形式をとる。
(2) X連鎖好中球減少症: Wiskot-Aldrich症候群の原因遺伝子であるWASの恒常活性化変異により発症する。重症好中球減少とともに単球減少や骨髄異形成を伴う。X連鎖形式をとる。
(3) P14欠損症: エンドソームアダプター蛋白であるp14の欠損により重症好中球減少、低ガンマグロブリン血症、CD8T細胞の細胞障害性低下、限局性の白皮症、成長障害を発症する。常染色体劣性形式をとる。
(4) Barth症候群:Tafazzin(TAZ)の変異により心筋症、成長遅滞、好中球減少を発症する。X連鎖形式をとる。
(5) Cohen症候群:COH1の変異により精神運動発達遅滞、特異顔貌、網膜症など多彩な症状とともに好中球減少症を発症する。常染色体劣性遺伝形式をとる。
(6) 好中球減少を伴うClericuzio型多形皮膚萎縮症(Clericuzio-type poikiloderma with neutropenia syndrome: PN): C16ORF57の変異により多形皮膚萎縮、爪肥厚症、掌蹠角化症、低身長、重症好中球減少を発症し、骨髄異形成症候群の合併もある。常染色体劣性遺伝形式をとる。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本免疫不全症研究会