概要
複合型免疫不全症(CID)はT細胞系、B細胞系の両者の機能不全により、細胞性免疫不全、液性免疫不全を合併した疾患の総称である。B細胞に異常がなくても、B細胞の成熟にヘルパーT細胞が必要なため、ヘルパーT細胞の障害は結果としてCIDを示す。2014年のIUIS免疫不全症分類では、CIDとして41疾患、その中に14の重症複合型免疫不全症(SCID)が含まれ、また特徴的な症状をともなうCIDとして37疾患が分類されている。
病因
T細胞の増殖に関するシグナルの異常、TCRや免疫グロブリンDNA再構成に必要な分子の異常など多岐にわたる。JAK3はIL-2、IL-7、IL-15等の受容体を構成するcommon gamma chainのシグナル伝達に重要な役割を果たし、常染色体劣性遺伝形式をとるその異常はcommon gamma chain欠損症(X-SCID)と類似のT細胞、NK細胞の減少を来すSCIDとなる。IL-7受容体α鎖(CD127)の異常も常染色体劣性遺伝形式を示し、X-SCID、ADA欠損症に次いで頻度の高いSCIDである。IL-7のT細胞発生、数の維持、生存支持の働きが障害されることでT細胞の減少を来す。DNA再構成に関与するDNAリガーゼⅣ、Cernunnos、Artemisの欠損症は、T細胞、B細胞の低下を認め、またDNA修復が障害されるため放射線感受性が高い。DNAリガーゼⅣ、Cernunnos患者では小頭症を認める。いずれも常染色体劣性遺伝である。
評価方法
T細胞機能評価としては末梢血T細胞数と、PHA、ConAによるリンパ球(T細胞)幼若化反応がある。SCIDでは末梢血T細胞(CD3陽性細胞)が300/μl未満となり、CIDでは2歳未満では1000未満、2から4歳では800未満、4歳以上では600未満に減少していることが一つの指標となる。PHAはCD4陽性ヘルパーT細胞を、ConAはCD8陽性細胞傷害性T細胞を強く刺激するマイトジェンであり、SCIDではPHAによるリンパ球幼若化反応が正常の10%未満、CIDでは30%未満となることが参考所見となる。ツベルクリン反応による遅延型皮膚過敏反応も参考となる。B細胞機能評価としては、血清IgG、IgA、IgM、IgE値、末梢血B細胞数(CD19またはCD20陽性細胞)、既にワクチンを接種している場合は血清特異抗体の有無、AB型患者では参考にならないが血液型裏試験が有用である。また新しい検査で商業ベースでは行うことが出来ないがT細胞、B細胞の新生能を評価できるTREC、KREC検査も診断に非常に有用である。最終的には遺伝子検査が必要となる場合が多く、原発性免疫不全症調査研究班に所属する施設にご相談していただきたい。http://pidj.rcai.riken.jp
臨床症状
様々な病原体に易感染性を示すが、特にニューモシスチス、クリプトコッカスといった真菌、サイトメガロウィルス感染はT細胞機能不全を強く示唆する感染症である。
合併症
自己免疫疾患や悪性疾患を伴うことがある。
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本免疫不全症研究会