概要
遺伝性の周期性発熱症候群の一つであり、筋肉痛や皮疹を伴う。アイルランド/スコットランドの一家系の報告(1982年)に始まり、1999年にⅠ型TNF受容体遺伝子の変異が同定され、TRAPS(TNF receptor-associated periodic fever syndrome)と命名された。
病因
染色体12p13上のTNFRSF1A遺伝子のミスセンス変異による常染色体優性遺伝形式で発症する。浸透率は高い。TNF receptor 1(TNFR1)は多くの細胞表面に発現しており、TNFと結合すると、細胞内にシグナルが伝達され炎症性サイトカインの産生やアポトーシスの誘導を起こす。健常者の場合、TNFR1とTNFが結合後、TNFR1分子は切断され、可溶性TNFR1分子となり、TNFを中和するとともに細胞内へのシグナル伝達が抑制され、反応は終息していく。一方、TRAPS患者ではTNFR1分子の切断が起こらず、TNFと結合した状態でシグナルが入り続けるため、発熱をはじめとするTRAPSのさまざまな症状が出現すると考えられた。しかし、その後、この機序では説明できない症例が数多く存在することが判明し、さまざまな機序が推測されている。
疫学
ヨーロッパに多く、罹患率は100万人に1人と報告されているが、本邦では約50名の患者の存在が推定されている。
発症年齢は平均4.3歳であるが、0歳から63歳までと幅広い。小児発症例が多いが、9%は30歳以降で発症するとされる。
臨床症状
約90%が周期的に発熱を繰り返す。周期性発熱症候群の中でも発熱期間が長いことがTRAPSの特徴で、しばしば5日以上持続し、3週間以上に及ぶこともある。発熱期の随伴症状として、関節痛/関節炎、筋痛、紅斑、結膜炎、眼周囲浮腫、腹痛、漿膜炎、頭痛などがある。
診断
治療
非ステロイド系抗炎症剤のみで発作が抑えられる症例から、副腎皮質ステロイドや生物学的製剤が必要な症例まで存在する。生物学的製剤ではTNF阻害薬etanercept (エンブレル®)が有効とする報告が多いが、IL-1受容体拮抗薬 anakinraやIL-6受容体拮抗薬 tocilizumab(アクテムラ®)が有効であった報告もある。コルヒチンの有効性は低いとされている。
合併症
10~14%にAAアミロイド―シスを合併するとされており、アミロイド―シスによる臓器障害が問題となる。
- 版
- :バージョン1.1
- 更新日
- :2015年3月31日
- 文責
- :日本小児リウマチ学会