1. 膠原病
  2. 大分類: 皮膚・結合組織疾患
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全身性強皮症

ぜんしんせいきょうひしょう

Systemic sclerosis

告示

番号:23

疾病名:全身性強皮症

疾患概念

全身性強皮症(Systemic sclerosis: SSc)は皮膚硬化をはじめとした全身臓器の線維化を特徴とする原因不明の慢性疾患である。SScは、皮膚症状の他に肺線維症・肺高血圧症や腎障害、消化器障害など全身臓器の合併症を認める。本疾患は、硬化の程度、進行などについては患者によって異なり多様な症状を認める。このためSScを大きく2つに分けるLeRoyらの分類が国際的に広く用いられている。これは臨床症状から皮膚硬化が肘・膝より体幹側に進展するびまん皮膚硬化型SSc(diffuse cutaneous SSc)、皮膚硬化が肘・膝までの末梢側に限局する限局皮膚硬化型SSc(limited cutaneous SSc)の2病型に分類される。

なお、皮膚のみに硬化が起こる「限局性強皮症(morphea)」はSScとは別の疾患である。すなわち、前述のlimited cutaneous SScとは全く異なるものである。

疫学

SScの小児例は少なく、我が国でも小児リウマチ性疾患の約1%程度とされている。海外でも同様の頻度であり、男女比は1:3~1:5である。一方、成人例はわが国において2万人以上いることが確認されており、男女比は1:12で、30~50歳代に好発する。

病因

小児期SScの病因は不明であるが、その基本病態は全身臓器の結合組織に生じる線維化である。この線維化の病態に、(1)結合組織における自己免疫応答、(2)血管内皮細胞障害、(3)皮膚線維芽細胞の活性化と増殖、(4)Transforming growth factor-β(TGF-β)やplatelet-derived factor(PDGF)、connective tissue growth factor(CTGF)など成長増殖因子、インターロイキン-1(IL-1)やIL-6など炎症性サイトカインなどの関与が考えられている。

臨床症状

1)皮膚病変

小児期SScの皮膚病変は左右対称性の手指の浮腫性腫脹で始まり、経過とともに皮膚硬化を生じ萎縮期となり強皮症指 (sclerodactylia)へ進展する。その他の皮膚病変として近位皮膚硬化(proximal scleroderma)や舌小帯短縮、関節屈曲拘縮、仮面様顔貌、皮下石灰化、全身色素沈着、手指側面の顆粒状角化などを認める。小児期SScではびまん皮膚硬化型SScが90%を占め、成人発症SScにおいては36-60%であるのと大きな差がみられる。

早期診断に有用な皮膚所見として、爪床血管の、爪上皮出血点(nailfold bleeding)や毛細血管拡張・蛇行/消失などを認める。進行例では手指などに難治性皮膚潰瘍(digital ulcer)を来たし指尖陥凹瘢痕(pitting scar)や手指先端の骨吸収による手指の短縮や爪の狭小化を来す。皮膚潰瘍は寒冷期に認めしばしば感染を併発し難治性となりやすい。関節拘縮による関節可動域制限は日常生活に影響を及ばすことがある。

2)レイノー現象
レイノー現象は、寒冷刺激など急激な温度変化や精神的なストレスなどによって発作的に引き起こされる手指の血管攣縮である。短時間に蒼白から発赤まで症状の変化を認め、特に加温によって改善することがある。本症状は手指のみならず足や舌にも認めることがある。小児期SSc例の90%以上に認め、時に皮膚症状の発現の数ヶ月から数年前より先行することがある。
3)内臓病変
小児期SScにおける内臓病変はすべての臓器に線維化を来しうるが、特に肺と消化器に病変を起こす頻度が高い。また予後因子としては肺病変と心筋病変、腎病変(特に腎クリーゼ)が重要である。
4)自己抗体検査
小児期SScでは各種の自己抗体を認める。小児期SScでは抗トポイソメラーゼ1(Scl-70)抗体の陽性率が90.9%と成人例に比べて高値である。また抗RNAポリメラーゼⅢ抗体も保険収載され、成人SSc症例では良好な特異度を示していることからも診断に有用である。これらの抗体価は疾患標識として有用であるが、疾患活動性には相関しない。
5)皮膚組織検査
SScにおいて皮膚所見は診断ならびに疾患活動性の評価として最も重要である。皮膚病変の半定量的な評価として modified Rodnan total skin thickness score(表1)が用いられる。さらに皮膚病変の評価として皮膚組織検査が行われる。組織所見は検査を行う病期によって異なる。病初期の所見として真皮の中~下層の膠原繊維の膨化・増生とリンパ球などの炎症細胞浸潤を認める。
表1. Modifiend Rodnan total skin thickness score
母指と示指の指先で小さくつまんだ感じ(small pinch)と、末節指腹で大きくつまみ上げた感じ(large pinch)を 0~3点、17か所で採点(最大51点)する。採点17か所は、手指、手背、前腕、上腕、大腿、下腿、足背(ここまで左右)と、顔、前胸部、腹部。手指は PIP と MCPの間をつまむ。一つの部位で効果に違いがある場合は、最大のスコアを採用する。
スコア皮膚硬化小さく
つまみ上げる
大きく
つまみ上げる
大きくつまみ上げたときの
皮膚の厚み
0なしできるできる厚くない
1軽度できるできる厚い
2中等度できないできるさらに厚い
3高度できないできない

診断

治療

発症初期(線維化が完成する前の浮腫期)に中等量のグルココルチコイドまたはメトトレキサートを単独、または両者を併用して使用することが多い。また、循環障害や内臓病変の程度によって様々な薬剤が対症療法として用いられる。線維化阻止を目的とした治療(グルココルチコイドと、メトトレキサートやシクロフォスファミドなどの免疫抑制薬)と臓器合併症の改善あるいは病勢進行阻止を目的とした対症療法(プロスタサイクリン、エンドセリン受容体拮抗剤、PDE-5阻害薬、プロトンポンプ阻害剤など)が治療選択の中核となる。循環障害、内臓病変の程度によって様々な薬剤が対症療法として用いられる。

予後

成人SScの5年生存率は80~90%で、小児期SScでは89%と成人例とほぼ同様の数字となっている。小児期SScの死因として心不全、肺高血圧症、腎不全が多い。またSScの予後は、病状の進行や病型、内臓合併症の有無によって異なる。一方機能的予後因子として皮膚硬化による四肢拘縮や消化管合併症、不整脈、腎不全が挙げられている。

成人期以降の注意点

病因未解明の全身性疾患であるため、医療機関への定期的通院の継続が必要である。高度の臓器障害がある場合、その臓器に関連する診療科を主科とする。病勢が安定していれば強皮症に精通した医師のいる膠原病内科ないし皮膚科を第一選択とする。

成人期以降の症状や経過、予後については不明であるが、d-SScの場合は、内臓障害の進行が予想され予後不良と思われる。

参考文献

  1. Foeldvari I. Update on juvenile systemic sclerosis. Curr Rheumatol Rep. 17:18, 2015.
:改訂第1版
更新日
:2021年11月1日
文責
:日本小児リウマチ学会