疾患概念
全身性強皮症(Systemic sclerosis: SSc)は皮膚硬化をはじめとした全身臓器の線維化を特徴とする原因不明の慢性疾患である。SScは、皮膚症状の他に肺線維症・肺高血圧症や腎障害、消化器障害など全身臓器の合併症を認める。本疾患は、硬化の程度、進行などについては患者によって異なり多様な症状を認める。このためSScを大きく2つに分けるLeRoyらの分類が国際的に広く用いられている。これは臨床症状から皮膚硬化が肘・膝より体幹側に進展するびまん皮膚硬化型SSc(diffuse cutaneous SSc)、皮膚硬化が肘・膝までの末梢側に限局する限局皮膚硬化型SSc(limited cutaneous SSc)の2病型に分類される。
なお、皮膚のみに硬化が起こる「限局性強皮症(morphea)」はSScとは別の疾患である。すなわち、前述のlimited cutaneous SScとは全く異なるものである。
疫学
病因
臨床症状
1)皮膚病変
小児期SScの皮膚病変は左右対称性の手指の浮腫性腫脹で始まり、経過とともに皮膚硬化を生じ萎縮期となり強皮症指 (sclerodactylia)へ進展する。その他の皮膚病変として近位皮膚硬化(proximal scleroderma)や舌小帯短縮、関節屈曲拘縮、仮面様顔貌、皮下石灰化、全身色素沈着、手指側面の顆粒状角化などを認める。小児期SScではびまん皮膚硬化型SScが90%を占め、成人発症SScにおいては36-60%であるのと大きな差がみられる。
早期診断に有用な皮膚所見として、爪床血管の、爪上皮出血点(nailfold bleeding)や毛細血管拡張・蛇行/消失などを認める。進行例では手指などに難治性皮膚潰瘍(digital ulcer)を来たし指尖陥凹瘢痕(pitting scar)や手指先端の骨吸収による手指の短縮や爪の狭小化を来す。皮膚潰瘍は寒冷期に認めしばしば感染を併発し難治性となりやすい。関節拘縮による関節可動域制限は日常生活に影響を及ばすことがある。
2)レイノー現象
レイノー現象は、寒冷刺激など急激な温度変化や精神的なストレスなどによって発作的に引き起こされる手指の血管攣縮である。短時間に蒼白から発赤まで症状の変化を認め、特に加温によって改善することがある。本症状は手指のみならず足や舌にも認めることがある。小児期SSc例の90%以上に認め、時に皮膚症状の発現の数ヶ月から数年前より先行することがある。3)内臓病変
小児期SScにおける内臓病変はすべての臓器に線維化を来しうるが、特に肺と消化器に病変を起こす頻度が高い。また予後因子としては肺病変と心筋病変、腎病変(特に腎クリーゼ)が重要である。4)自己抗体検査
小児期SScでは各種の自己抗体を認める。小児期SScでは抗トポイソメラーゼ1(Scl-70)抗体の陽性率が90.9%と成人例に比べて高値である。また抗RNAポリメラーゼⅢ抗体も保険収載され、成人SSc症例では良好な特異度を示していることからも診断に有用である。これらの抗体価は疾患標識として有用であるが、疾患活動性には相関しない。5)皮膚組織検査
SScにおいて皮膚所見は診断ならびに疾患活動性の評価として最も重要である。皮膚病変の半定量的な評価として modified Rodnan total skin thickness score(表1)が用いられる。さらに皮膚病変の評価として皮膚組織検査が行われる。組織所見は検査を行う病期によって異なる。病初期の所見として真皮の中~下層の膠原繊維の膨化・増生とリンパ球などの炎症細胞浸潤を認める。スコア | 皮膚硬化 | 小さく つまみ上げる | 大きく つまみ上げる | 大きくつまみ上げたときの 皮膚の厚み |
---|---|---|---|---|
0 | なし | できる | できる | 厚くない |
1 | 軽度 | できる | できる | 厚い |
2 | 中等度 | できない | できる | さらに厚い |
3 | 高度 | できない | できない |
診断
治療
予後
成人期以降の注意点
病因未解明の全身性疾患であるため、医療機関への定期的通院の継続が必要である。高度の臓器障害がある場合、その臓器に関連する診療科を主科とする。病勢が安定していれば強皮症に精通した医師のいる膠原病内科ないし皮膚科を第一選択とする。
成人期以降の症状や経過、予後については不明であるが、d-SScの場合は、内臓障害の進行が予想され予後不良と思われる。
参考文献
- Foeldvari I. Update on juvenile systemic sclerosis. Curr Rheumatol Rep. 17:18, 2015.
- 版
- :改訂第1版
- 更新日
- :2021年11月1日
- 文責
- :日本小児リウマチ学会