1. 内分泌疾患
  2. 大分類: 性分化疾患
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卵精巣性性分化疾患

らんせいそうせいせいぶんかしっかん

Ovotesticular dsd

告示

番号:53

疾病名:卵精巣性性分化疾患

概念・定義

卵精巣性性分化疾患(ovotesticular DSD、以前の呼称では真性半陰陽)は、同一個体内に卵巣組織と精巣組織が同側あるいは対側に存在する状態と定義される。異なる性腺の組み合わせは多様で、一側が精巣で対側が卵巣のタイプが20%、一側が精巣または卵巣で対側が卵巣精巣のタイプが約50%、両側ともに卵巣精巣のタイプが約30%と報告されている1)。 核型は、人種によって差を認めるが、本邦における125例での検討では、46,XXが61.6%、46,XYが12.8%、46,XX/46,XYが14.4%であったと報告されている2)。

病因

多様であり不明な部分も多いが、①46,XX/46,XYキメラ、②45,X/46,XYモザイク、③SRY陽性、46,XX、④SRY体細胞変異、⑤SOX9重複、⑥X染色体短腕部分欠失、⑦22番染色体部分重複などが報告されている3)。同一家系内にXX男性と卵精巣性性分化疾患をともに認め、男性を介した常染色体優性遺伝と考えられる例も存在する。

疫学

発症頻度は不明である。日本小児内分泌学会と日本小児泌尿器科学会の全学会員を対象に行った調査では、48例の確診例が確認されており4)、また、文献的には本邦でこれまでに150例以上の報告が存在する2)

臨床症状

性分化の障害の程度は、正常女性に近い例から正常男性に近い例までさまざまである。性腺は、腹腔内、鼠径部、外陰部とさまざまな部位に存在する。一般的に精巣成分を含む性腺は下降しやすい。性管は、原則的に性腺に対応した分化を呈する。すなわち、精巣成分を有する性腺と同側ではウォルフ管の分化を、精巣成分を欠く性腺と同側ではミュラー管の分化の傾向が認められる。卵巣精巣の場合は、性管の分化は様々であるが子宮はほぼ全例で種々の程度で認められる。思春期では、社会的男性における女性化乳房と社会的女性における男性化徴候が生じることがある。月経は社会的女性の約半数で認められる3)

診断

病歴、理学的所見、染色体検査、内分泌検査、画像検査、腹腔鏡、性腺生検を適宜行い診断する。46,XX/46,XYの場合、hCG試験に対するテストステロン反応とhMG試験に対するエストラジオール反応が同時に認められる場合などに卵精巣性性分化疾患が疑われる3)。確定診断は性腺の組織所見による。

治療

決定された社会的性別により必要とされる外陰形成術を行い、性別と異なる性腺・性管、異形成が認められる性腺は摘出することが多い。男児で小陰茎を有する場合にはテストステロン治療を行うことがある。思春期以降は必要に応じ性ホルモン補充療法を行う

予後

性腺腫瘍の発生率は2.6%5)~4.6%1)と報告されている。本疾患の主要な核型である、46,XX、46,XY、46,XX/46,XYすべてで性腺腫瘍の発生が報告されており、卵巣精巣、卵巣、精巣のどの性腺においても腫瘍の発生が報告されている1)。性腺腫瘍が診断された年齢は14か月~80歳であり、平均診断年齢は25.5歳であったとの報告がある1)。 妊孕性に関しては、卵子形成と排卵は稀ではないが、精子形成は生じにくいとされている3)。女性においては挙児を得た例が複数報告されているが(ほとんどは46,XX症例)、男性では非常に稀である。

文献

1) Krob G, Braun A, Kuhnle U: True hermaphroditism: geographical distribution, clinical findings, chromosomes and gonadal histology. Eur J Pediatr. 1994; 153:2-10 2) Matsui F, Shimada K, Matsumoto F, Itesako T, Nara K, Ida S, Nakayama M: Long-term outcome of ovotesticular disorder of sex development: A single center experience. Int J Urol. 2011; 18:231-236 3) 緒方勤 真性半陰陽 小児科診療 2002; 10:1585-1589 4) 大山建司 日本の性分化疾患の実情 日児誌 2011; 115:1-4 5) van Niekerk WA, Retief AE: The gonads of human true hermaphrodites. Hum Genet. 1981; 58:117-122

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会