1. 内分泌疾患
  2. 大分類: 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
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低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(カルマン(Kallmann)症候群を除く。)

ていごなどとろぴんせいせいせんきのうていかしょう (かるまんしょうこうぐんをのぞく。)

告示

番号:72

疾病名:低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(カルマン症候群を除く。)

疾患概要・定義

 二次性徴とは、男子における精巣の増大と外性器の成熟・陰毛の発生・腋毛やひげ、変声を、女子における乳房発達、陰毛発生と外性器の成熟および腋毛の発生・月経がおこり、順次進行していくことである。一般に、二次性徴の開始時期には個人差があり、平均開始年齢からほぼ正規分布を示すと考えられている。二次性徴が平均から2SDまたは95パーセンタイルよりもに遅れて開始したものは、標準的な幅を超えて病的に遅延していると考えられ、これを思春期遅発症と定義する。思春期遅発症の中で、下垂体ゴナドトロピン分泌低下が成人期になっても持続し回復しないために性腺機能低下症が持続するものを、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と呼ぶ。  思春期における二次性徴は、脳内視床下部よりも中枢の「成熟時計」と呼ばれる体内時計により、視床下部ゴナドトロピン放出ホルモン(LHRH)の分泌が亢進し、これが下垂体からのゴナドトロピン(LHおよびFSH)の分泌を促進し、さらにゴナドトロピンが性腺からの性ホルモン(精巣からのテストステロンまたは卵巣からのエストロジェン)分泌を促進することで発来し、進行する。視床下部のLHRHニューロンは嗅脳原基(Olfactory placode)より発生し、視床下部に遊走していくが、カルマン(Kallmann)症候群は、このLHRHニューロンの遊走や分布に障害がおこるために、LHRH分泌が欠如または不十分となり、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症をきたす。さらに嗅球の機能障害により、無嗅症や低嗅症を併発する。また、腎形成異常や難聴、口唇口蓋裂などの合併が知られている。  カルマン(Kallmann)症候群以外の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では、二次性徴開始に関わる遺伝子変異による先天性のものと、脳内器質性疾患や放射線照射などによる後天性のものがある。

疫学

 報告により異なるが、先天性のものは、10万人に1.2〜10名程度と考えられている。

病因

 思春期における二次性徴は、脳内視床下部よりも中枢の「成熟時計」と呼ばれる体内時計により、視床下部ゴナドトロピン放出ホルモン(LHRH)の分泌が亢進し、これが下垂体からのゴナドトロピン(LHおよびFSH)の分泌を促進し、さらにゴナドトロピンが性腺からの性ホルモン(精巣からのテストステロンまたは卵巣からのエストロジェン)分泌を促進することで発来し、進行する。視床下部のLHRHニューロンは嗅脳原基(Olfactory placode)より発生し、視床下部に遊走していくが、カルマン(Kallmann)症候群は、このLHRHニューロンの遊走や分布に障害がおこるために、LHRH分泌が欠如または不十分となり、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症をきたす。さらに嗅球の機能障害により、無嗅症や低嗅症を併発する。カルマン症候群の病因として、これまでに7つの遺伝子変異が同定されており、それぞれの遺伝子変異に特異的な合併症も存在し、これらの合併症に対しての治療が必要である。  カルマン(Kallmann)症候群以外の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では、二次性徴開始に関わる遺伝子変異による先天性のものと、脳内器質性疾患や放射線照射などによる後天性のものがある。先天性の場合、多くの遺伝子変異において性腺機能低下以外には特異的な合併症は有さないと考えられており、これまでに14の責任遺伝子が同定されている。

症状

 女児で14歳、男児で15歳まで二次性徴が発来しないか、発来しても進行せず不完全になる。  思春期年齢では一時的に低身長傾向となるが、骨年齢が遅延するため最終的には高身長となる。骨密度は治療前に年齢相当に比し低値を呈するが、性ホルモン補充により増加する。  Kallmann症候群では無嗅症・低嗅症を合併するが、同じ遺伝子変異を有する家系内で嗅覚正常例も報告されている。また、腎形成異常や難聴、口唇口蓋裂、鏡像運動などの合併が知られている。これらの合併症は必発ではなく、重症度にも大きな幅がある。  Kallmann症候群以外の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では、副腎不全の合併を起こすものもあるが、多くの場合性腺機能低下以外は無症状である。

治療

 性ホルモン補充療法。男児ではHCG-FSH療法、テストステロン補充療法。女児ではエストロジェン補充療法から開始し、カウフマン療法を行う。

予後

 適切な性ホルモン補充療法により、二次性徴の進行と身長増加、骨密度の増加が得られる。  生殖補助医療により挙児の例もある。 一部症例で自然軽快が認められる。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会