1. 内分泌疾患
  2. 大分類: 成長ホルモン分泌不全性低身長症
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成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症(脳の器質的原因によるものを除く。)

せいちょうほるもんぶんぴつふぜんせいていしんちょうしょう (のうのきしつてきげんいんによるものをのぞく。)

Growth hormone deficiency

告示

番号:46

疾病名:成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症(脳の器質的原因によるものを除く。)

概念・定義

成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)はGH分泌不全による低身長症で,その他の下垂体ホルモン[TSH、ゴナドトロピン(LH,FSH)、ACTHあるいはADH]の分泌不全を伴っていることもある(下垂体機能低下症)。 注:GHDの原因としては,器質的なものと特発性のものに分けられる。器質性GHDには頭蓋咽頭腫,胚芽腫など脳の器質異常、骨盤位分娩・仮死・黄疸遷延などの周産期異常によって引き起こされ、頭部MRI検査で,下垂体茎離断、異所性後葉あるいは下垂体低形成をみとめる場合が含まれる。これらは成長ホルモン分泌不全性低身長症(脳の器質的原因による)に含まれる。

病因

GHDの原因としては、器質的なものと特発性のものに分けられ、器質性GHDが約10%を占める。 器質性GHDには頭蓋咽頭腫,胚芽腫など脳の器質異常、頭蓋照射、骨盤位分娩・仮死・黄疸遷延などの周産期異常によって引き起こされ、頭部MRI検査で、下垂体茎離断、異所性後葉あるいは下垂体低形成をみとめる場合が含まれる。 残りの大部分は病因がはっきりしない特発性と呼ばれるものに分類される。頻度は非常に少ないが、GH-IGF1系の遺伝子異常や、下垂体の発生・分化に関与する遺伝子異常による遺伝性GHDがある。 近年、著明な成長障害を示し、GH頂値やIGF1値が著明低値のGHD症例から、GH-IGF1系のホルモンや下垂体の発生・分化にかかわる遺伝子群の遺伝子異常が次々と同定されている。GH-IGF1系の異常では単独GH欠損症を示し、下垂体の発生・分化にかかわる遺伝子群による遺伝子異常では、多発下垂体ホルモン分泌不全症を示す事が多い。

疫学

頻度は、6~17歳の学童期で、1万人あたり、男児2.14人、女児、0.71人である。男女比は特発性2.2:1、器質性1.2:1で特発性は男児に多い。

臨床症状

GHDの病態は、成長率の低下であり、その結果低身長をきたす。重症型GHDでは、乳幼児期からの成長障害がみられ、低血糖などの症状を伴うことがある。本症では、乳幼児期の成長率は低く、3~4歳時にはすでに-2SDを下回っていることが多い。それ以降も身長増加率が不十分なため、低身長が更に進行することが多い。

診断

診断は、低身長とGH分泌不全を証明する事である。血中IGF1値の低値はGHDの可能性を示唆するが、診断にはGH分泌不全の証明が不可欠である。 GHDの診断基準は、問脳下垂体障害に関する調査研究班の「成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断の手引き」で定められており、平成24年度に改訂された診断基準を診断の手引きに示している。同性・同年齢の平均身長より2標準偏差(SD)以上下回っている成長障害があり、インスリン負荷、アルギニン負荷、L-DOPA負荷、クロニジン負荷、グルカゴン負荷試験またはGHRP-2負荷試験のうち、2つ以上のGH分泌刺激試験で、GH頂値が低反応であった場合にGHDと診断される. 著明な成長障害を示しGH頂値やIGF1値が著明低値のGHD症例あるいはGHDの家族歴がある症例では、 GH-IGF1系のホルモンや下垂体の発生・分化にかかわる遺伝子群の解析も必要となる。

治療

GHDの治療は遺伝子組換えGH薬の皮下注射(0.175mg/kg/週)で、毎日あるいは週6回程度の注射が必要なため自宅での自己注射が認められている。短期的には身長増加を促進して、なるべく早く身長を正常化し、低身長に伴う心理社会的問題の解決を図り、長期的には成人身長の正常化を目標とする。そのためには比較的早期から治療を開始することが望ましい。GHだけでなく、他の欠乏しているホルモンの補償療法も必要な場合もある。

予後

GH分泌は加齢に伴って、直線的に減少するものの生涯分泌されており、体組成の維持あるいは動脈硬化危険因子の低減など、代謝調節因子の役割を果たしており、GHD患者の生命予後は健常人に比較して短いことが明らかになっている。これに対して成人GHDでもGH療法が認められている。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児内分泌学会

成長ホルモン療法の助成に関して

低身長を認め成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
成長ホルモン療法の助成に関しては下記を参照してください。