概念・定義
僧帽弁輪直上の心房側に起始する膜用の隆起物が全周性に僧帽弁を覆い、様々な程度の狭窄症状を引き起こす先天性心疾患である。この膜様物は左心耳よりも僧帽弁側にある。単独で発症することもあり、大動脈縮窄などの他の先天性心疾患に合併することもある。有意な狭窄で、肺うっ血や肺高血圧をきたす例では、治療が必要である。
病因
先天性
疫学
先天性僧帽弁狭窄症の頻度は先天性心疾患の0.2% 程度である
臨床症状
合併する先天性心疾患により症状は様々である。左房から左室への流入障害により左房圧が上昇し、肺うっ血をきたす。進行すると肺水腫、肺高血圧となり、低心拍出症状が出現する。心拍数の増加により拡張時間が短縮するため、労作時に症状は強くなり労作時呼吸困難をきたす。また乳児期には繰り返す呼吸器感染、体重増加不良などを呈することもある
診断
典型的にはII音の亢進、心尖部で拡張期雑音、前収縮期雑音が認められる。 胸部レントゲン:左房陰影の拡大、肺うっ血を認める 心電図:左房拡大、右房拡大、右室肥大所見を呈する。進行すれば心房細動が出現することがある。 心臓超音波検査:左房内僧帽弁上に異常隔壁を描出可能である。この膜様物は左心耳よりも僧帽弁側にあることが、三心房心との鑑別点である。左房は拡大する。連続波ドプラを用いて機能的僧帽弁口面積を測定することで重症度判定が可能であるが、大動脈弁狭窄などの合併で左室拡張末期圧が上昇している場合には評価困難である。 心臓カテーテル検査:左房圧、肺動脈楔入圧、肺動脈圧は上昇し、左房-左室拡張末期圧較差は増大する。肺動脈造影あるいは左房造影で拡張した左房と小さめの左室を認め、左房からの造影剤排出は遅延する
治療
有意な狭窄、すなわち内科治療が必要である症例では、手術で膜様隆起物の切除が行われる
予後
無治療では予後不良である。外科的治療例では本疾患単独の症例では良好な予後が期待できるが、多くの症例では他の心奇形を合併し、治療困難なこともある
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会