概念、定義
肺の疾患の存在による肺循環の障害によって肺動脈圧の上昇をきたし、右心不全に陥る病態。新生児期の慢性肺疾患、高度の扁桃肥大による気道閉塞、感染性肺疾患、喘息などが関与する。基礎疾患として、低出征体重児の長期人工呼吸管理による慢性肺疾患bronchopulmonary dysplasiaなどがあることがある。成人では間質性肺炎、気管支拡張症、長年の喫煙による肺障害などが原因になることがある。治療には循環障害の原因となっている肺の疾患の治療を行う。肺高血圧に対しては、肺血管拡張薬を用いる。右心不全に対しては抗心不全療法をおこなう。
病因
新生児期の慢性肺疾患、高度の扁桃肥大による気道閉塞、感染性肺疾患、喘息などが関与する。基礎疾患として、低出征体重児の長期人工呼吸管理による慢性肺疾患bronchopulmonary dysplasiaなどがあることがある
疫学
未熟児、低出生体重児の出生は増加している。低出征体重児の長期人工呼吸管理による慢性肺疾患bronchopulmonary dysplasiaはまれではないが、肺動脈圧の高度上昇をきたし、右心不全に陥る病態は比較的まれである
臨床症状
胸痛、呼吸困難、血痰、チアノーゼ、むくみ、息切れ、痰などがある。右心不全の程度により肝腫大、腹水などがみられることがある
診断
呼吸器症状に加え、肝腫大、下肢の浮腫など右心不全症状が出現する。 【胸部エックス線所見】 心拡大を認め、主肺動脈は拡大する。肺野は基礎疾患により様々な所見を示す。 【心電図】 右軸偏位、右室肥大を認める。 【心エコー図】 心エコー図にて右室圧負荷所見を認める。三尖弁閉鎖不全の逆流血流速度や、心室中隔の形態から右室圧が推定できる。 【心臓カテーテル】 右室、肺動脈圧の上昇がみられる。肺高血圧症の定義は右心カテーテルを用いて実測した肺動脈平均圧が25mmHg以上とされている
治療
治療には循環障害の原因となっている肺の疾患の治療を行う。肺高血圧に対しては、肺血管拡張薬を用いる。右心不全に対しては抗心不全療法をおこなう
予後
肺疾患の予後で規定される。心不全治療や肺高血圧に対する治療は、補佐的な治療である
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会