概念・定義
先天的に支持組織の脆弱性によりValsalva洞の一部が右室もしくは右房に瘤状に突出している。漏斗部心室中隔欠損に大動脈弁とバルサルバ洞が落ち込み、バルサルバ洞の拡大と弁の逸脱をきたしたものが多い。心室中隔欠損はバルサルバ洞で閉鎖されていることもある。大動脈弁の変形から閉鎖不全をきたすことがある。またバルサルバ洞が右室など交通を作ることがある(バルサルバ洞破裂)。破裂すると、突然の胸痛とともに、左右短絡をきたす。手術適応である。
病因
漏斗部心室中隔欠損に大動脈弁とバルサルバ洞が落ち込み、バルサルバ洞の拡大と弁の逸脱をきたしたものが多い
疫学
比較的まれ。75%は男性
病態
右冠動脈洞、無冠動脈洞に多い。破裂すると突然の左右シャントをきたす
臨床症状
破裂前は無症状。破裂すると、突然の胸痛、呼吸困難、動悸、うっ血性心不全をきたす
診断
【理学的所見】 特にない。漏斗部心室中隔欠損症に伴う収縮期雑音を聴取する。大動脈弁閉鎖不全を伴うと、拡張期雑音を聴取する。破裂した場合は連続性雑音。Bounding pulse跳脈。 【胸部エックス線所見】 特異的所見はない。漏斗部心室中隔欠損症の欠損孔の大きさにより、心拡大と肺血管陰影増強を認める。 【心電図】 特異的所見はない。漏斗部心室中隔欠損症の欠損孔の大きさにより、左室肥大所見を認める。 【心エコー図】 バルサルバ洞の一部が瘤状に拡大した状態を描出できる。漏斗部心室中隔欠損の欠損孔に大動脈弁が落ち込み 変形している状態を確認する。 【心臓カテーテル・造影所見】 造影所見で、バルサルバ洞の一部が瘤状に拡大した状態を描出できる。大動脈弁の変形を認める。時に閉鎖不全を合併する
治療
Valsalva洞動脈瘤破裂はシャント量が少量であっても手術適応である。右房あるいは右室経由でValsalva洞動脈瘤の突出部を切除しパッチ閉鎖 する
予後
大動脈弁の変形や、大動脈弁閉鎖不全の程度に依存する。大動脈弁閉鎖不全が高度なら、人口弁置換術が必要なこともある
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会