概念・定義
病因
胎生期初期の原始的な総動脈幹の中隔形成にあたり、大動脈と肺動脈が正しく分割されず、一側の肺動脈(通常の左側大動脈弓の場合、右肺動脈)が大動脈側に分割されて生じる
疫学
稀少疾患で、わが国の先天性心疾患剖検例の約0.2%を占める
臨床症状
呼吸不全、心不全、肺高血圧(大動脈から肺動脈への左右短絡) 聴診上の連続性雑音、脈圧増大(拡張期血圧の低下) 生後1~2か月で呼吸促迫、哺乳困難、体重増加不良等の心不全症状を生じる。肺炎など重症の呼吸器感染に罹患しやすい
診断
【胸部エックス線所見】 心拡大、太い肺血管陰影、肺血流陰影増強、肺血管陰影の左右差 【心電図】 右室肥大または両室肥大 【心エコー図】 右または左肺動脈の上行大動脈からの起始 【心臓カテーテル・造影所見】 右室または肺動脈造影で肺動脈が一側しか造影されず、対側の肺動脈は左室または上行大動脈造影で、上行大動脈から起始する。正常側も肺高血圧が存在する。 上記の検査所見が認められる。確定診断には、一側の肺動脈が上行大動脈から起始することを証明する
治療
心不全、呼吸不全に対する内科的治療を行い、できる限り早期に上行大動脈から起始する肺動脈を切り離して主肺動脈に吻合する手術を行う。術後に肺動脈吻合部の狭窄が起こりやすく、生涯的に内科的管理、要すれば遠隔期にカテーテル治療ないし再手術が必要
予後
大部分の症例で乳児期に心不全、呼吸不全を発症し、無治療の場合、約半数が生後6か月までに死亡する。生後6か月以内に手術すれば、肺動脈圧は通常正常化するが、未手術例では肺血管閉塞病変が進行し、1歳以上では手術治療が困難になり、予後不良。まれに肺高血圧が軽度で成人期まで生存する例がある
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会