概念・定義
病因
多くは先天性に生じる。弁上型と弁下型の頻度は1 : 2 であるが, まれに両者が合併することもある. 他の合併心奇形としては,心房中隔欠損, 大動脈弁下狭窄, 大動脈狭窄, 動脈管開存, 肺動脈狭窄などがある. 後天性には, 外傷, 心内膜炎, 大動脈または僧帽弁置換後に発症することがある. 弁置換後に発生する左室右房交通症は, 術中,膜性中隔を損傷することにより生じる.
疫学
右房交通症は, 全先天性心疾患の1%以下の比較的頻度の低い疾患である
臨床症状
出生直後から心雑音に気付かれることが多い. 1/4の症例では左室容量負荷による心不全症状を呈する.心雑音は心室中隔欠損類似の汎収縮期雑音で, 左右短絡量が多いと心尖部で拡張期ランブルを穂取する.
診断
カラードプラ法で左心室から右房内に収縮期の異常血流や右房内で, 酸素飽和度の上昇により診断する。心室中隔欠損、三尖弁逆流との鑑別を要する。 【胸部エックス線】 一般に, 左房・左室および右房の拡大を認める. 肺血管陰影は増強を伴う. 【心電図】 心電図では, 両心室負荷, 右房負荷, 時に右脚ブロックを認める. 【心エコー図】 カラードプラ法で右房内に収縮期の異常血流を認める。想定される右房右室圧較差に相当する流速に比して,この異常血流の最高流速(4m/秒以上のことが多い) が大きい時には, 右房への逆流は右室から(三尖弁閉鎖不全) ではなく、左室からの短絡であると判断される.本症では右房の拡大を認めるが,左心系の容量負荷も存在するため,心室中隔の奇異性運動は認めないことが多い. 【心臓カテーテル・造影所見】 右房内で, 酸素飽和度の上昇がみられる. 確定診断には左室造影が必要で, 左前30度+頭側40度での造影が有用である. 三尖弁閉鎖不全を合併した心室中隔欠損との鑑別が必要である
治療
自然閉鎖の可能性は少なく心内膜炎の合併もあり, 肺体血流比が1.5-2.0以上の場合には、外科手術の適応となる
予後
手術しない場合、欠損孔の大きさと合併奇形により予後は異なる. 短絡量の多いものでは、心不全をきたす。手術治療の成績は概ね良好である
- 版
- :バージョン1.0
- 更新日
- :2014年10月1日
- 文責
- :日本小児循環器学会