1. 慢性心疾患
  2. 大分類: 単心室症
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単心室症

たんしんしつしょう

Single ventricle

告示

番号:68

疾病名:単心室症

概要

形態学的、血行動態的に、ひとつの心室しか存在しないもの。ただし、痕跡的にもうひとつの心室が存在してもよい。痕跡的心室が存在する場合には、その痕跡的心室には房室弁付属器は存在しない。左室型単心室と右室型単心室がある。治療が困難な疾患のひとつであるが、近年の外科治療の進歩で予後が改善されてきた。肺血流の多寡や肺静脈の狭窄により血行動態は異なる。
臨床的には、肺血流の多少により三群に分けられる。

1. 肺血流増加群

チアノーゼは軽いが、乳児期早期より肺血流が増加して心不全を来たし予後不良なものが多い。肺血流増加群では心不全症状が主でありチアノーゼは目立たない。大動脈流出路の閉塞性病変(球室孔狭窄、大動脈弁下狭窄、大動脈弁狭窄・閉鎖)や大動脈縮窄・離断があると、新生児期から重篤な心不全症状を呈する。肺動脈絞扼術が必要である。

2. 著しい肺血流減少群

高度の肺動脈狭窄や閉鎖があると、新生児期より著明なチアノーゼが現れ低酸素血症による諸症状が出現する。放置すれば多くは乳児期に死亡する。重度の肺動脈狭窄や肺動脈閉鎖の合併では、右室性単心室とくに臓器心房錯位に多く、生後早期より高度のチアノーゼで発症し、肺動脈狭窄による収縮性駆出性雑音や動脈管開存による連続性雑音を聴取する。

3. 適度な肺血流を示す群

中等度以下の肺動脈狭窄を合併し、臨床的にはほとんどチアノーゼを認めないか軽度である。運動能は良く保たれている。予後は、手術無しで中年期まで生存することもある。 以上の3群のどれであっても、基本的には、フォンタン型手術が施行される。肺血流増加群では、心室中隔形成術が施行されることがある。いずれの長期予後も不良である。

疫学

全先天性心疾患の1~2%である。左室型単心室の方が多い

症状

生後よりチアノーゼ、心不全で発症する。肺動脈狭窄による収縮期心雑音や動脈管開存による連続性雑音がある。肺血流増加型では心不全、呼吸困難、哺乳障害などの症状が主体でチアノーゼは目立たない。また、房室弁逆流が強いとさらに心不全が強まる

診断

【心エコー検査】 心室中隔が存在しない。右室型単心室か左室型単心室かの判断は困難なことも多い。右室型単心室では心内腔が右室形態で痕跡的左室はないかあっても後方に位置する。左室型単心室では前方に痕跡的右室が存在する。心エコーでは心房と心室のつながりをみると1つの心室に両房室弁ないし共通房室弁が流入している。心エコーではさらに心室と大血管のつながりを診断できる。肺動脈の狭窄の有無、肺高血圧の有無も判別できる。
【胸部エックス線】 心拡大と肺血管陰影の程度は肺への血流による。高度の房室弁逆流があるとさらに心拡大が増す。
【心電図】 左室型単心室では左軸偏位と左室肥大。右室型単心室では右室肥大所見を呈す。
【心臓カテーテル・造影所見】 心臓カテーテルと血管造影により肺血流量、肺血管抵抗、肺動脈または大動脈狭窄の程度、心室容積や機能、房室弁逆流、狭窄の程度など、手術に必要なデータが入手できる。形態に関しては、エコー所見以上の情報が得られることは少ない。
鑑別診断 一側心室が異常に大きくなる左室低形成症候群、純型肺動脈閉鎖、三尖弁閉鎖、左室型または右室型の房室中隔欠損症(心内膜欠損症)、三尖弁または僧帽弁両室挿入など

治療

【内科的治療】 心不全状態にある場合は強心薬、利尿薬や血管拡張薬を使用する。肺血流減少では動脈管開存を図ってプロスタグランジンE1を使用し、大動脈—肺動脈短絡術に備える。 【外科治療】 姑息術として肺血流減少型には大動脈—肺動脈短絡術などの短絡術を行い、肺血流増加型では肺動脈絞扼術が選択される。心内修復には適応例に対しFontan手術が行われる。房室弁逆流が強い例では房室弁形成術が追加される。肺血流増加群では、心室中隔形成術が施行されることがある

予後

自然予後は不良で、1ヶ月で50%、6ヶ月で75%が死亡する。近年、手術成績は改善しており、Fontan型手術への到達例も増えている。しかし、房室弁逆流や心機能低下例、無脾症候群などの予後はよくない

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児循環器学会